白洲文平

白洲文平：実業家としての生涯と華麗なる建築遍歴

白洲文平（1869-1935）は、明治から昭和初期にかけて活躍した実業家です。現在の兵庫県三田市に生まれ、白洲退蔵を父に持ち、後に著名な実業家となる白洲次郎を息子としています。幼少期から恵まれた環境で育ち、アメリカ人の家庭教師のもと英語を学びました。

1882年には、東京の築地大学校に入学。卒業後、さらに世界へ羽ばたき、名門ハーバード大学やボン大学へと留学を果たします。留学中には、近衛篤麿、新渡戸稲造、樺山愛輔といった、後の日本の歴史を彩る人物たちと交流を深めました。

帰国後は、三井銀行や大阪紡績といった大企業に勤務しますが、その後独立。神戸市中央区栄町に貿易会社「白洲商店」を設立し、綿貿易を基盤に事業を拡大しました。持ち前の胆力と手腕で、莫大な富を築き上げ、その名は広く知られるようになります。豪放で、時に傲慢とも取れるその性格から、周囲からは畏敬の念を込めて「白洲将軍」と呼ばれました。

文平のもう一つの顔は、熱心な建築愛好家でした。数々の邸宅を所有し、それらは「白洲屋敷」として知られています。中でも、兵庫県伊丹市（当時川辺郡伊丹町）に建設された邸宅は圧巻でした。4万坪という広大な敷地に、コロー、モネ、マティス、ピカソといった巨匠たちの作品を収めた美術館を備え、煉瓦造りの給水塔も存在したと伝えられています。壮大なスケールと洗練された美意識が反映された、まさに豪邸と呼ぶにふさわしいものでした。

しかし、1928年の昭和金融恐慌は、白洲商店に大きな打撃を与えます。事業は倒産し、文平は人生の晩年を大分県竹田市荻町へと移し、そこで静かに余生を過ごしました。阿蘇山麓に建てられた洋館で、1935年に67歳（満65-66歳没）で生涯を閉じました。

なお、現在一般的に使われている「ふみひら」という名前ですが、史料によっては「Mr B.P. Shirasu」と表記されているものもあり、「ぶんぺい」という読み方であった可能性も指摘されています。

白洲文平の生涯は、成功と挫折、そして時代の変遷を反映した波乱に満ちたものでした。莫大な富を築き上げた実業家としての側面と、建築への情熱を注いだ豪胆な個人の側面、両方の魅力を併せ持つ、まさに時代を彩った人物と言えるでしょう。彼の築き上げた事業や邸宅は、現代においても、その名を残し、歴史に刻まれた足跡となっています。

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