白熱 (映画)

映画『白熱』の詳細

『白熱』は、1949年に公開されたアメリカのモノクロ映画であり、ラオール・ウォルシュが監督を務めた作品です。この映画は、母親への依存心が強い残虐なギャングの物語を描いており、狂気と暴力が絡み合う凄絶な内容が特徴です。ギャング映画やフィルム・ノワールの古典として知られ、その影響力は現在も色あせることなく、多くの映画に影響を与えています。

ストーリーの流れ

物語は、冷酷なギャングのコーディ・ジャレット（演：ジェームズ・キャグニー）が賭け金を狙って列車を襲撃し、現金を強奪することから始まります。その後、彼は遠く離れた地点で自首し、アリバイを得るという巧妙な策略によって重罪を免れます。コーディは、母親であり犯罪の師でもあるマー・ジャレット（演：マーガレット・ワイチャーリイ）に異常なまでに溺愛されて育ち、その影響でサディストとしての一面を持つようになります。

一方、彼の妻バーナ（演：ヴァージニア・メイヨ）はコーディとの関係に限界を感じ、夫の右腕ビッグ・エド（演：スティーヴ・コクラン）と密通するようになります。捜査当局はコーディたちの列車強盗を突き止め、潜入捜査官ファロン（演：エドモンド・オブライエン）を囚人として刑務所に送り込みます。破滅へ向かうコーディの姿は次第に明らかになり、彼の信頼を寄せるファロンとの関係が物語の重要な要素となります。

コーディは、母の死を知ると逆上し、仲間を集めて刑務所からの脱走を決行します。彼はエドを殺し、バーナを脅迫して引き戻し、仲間と共に新たな強奪計画を練ります。計画の一環として彼らはトロイの木馬作戦を考案し、化学工場からの現金強奪を試みますが、仲間がファロンの正体に気づき、コーディは裏切りの恐怖に見舞われます。

クライマックスと結末

物語のクライマックス、コーディは捜査当局に包囲されます。彼は完全に正気を失い、大きなガスタンクに駆け上がり、そこに発砲します。これにより、タンクは爆発し、彼は絶望的な結末を迎えることになります。このラストシーンは非常に衝撃的で、「白熱」というタイトルに象徴されるように全てが破滅へと向かう様子が強烈に描かれています。

作品の背景と制作

この映画は、戦前からギャング映画界のスターであったキャグニーを主演に、ウォルシュ監督がその才能を活かして制作しました。当時はセミ・ドキュメンタリー撮影手法が流行しており、リアルな描写が求められる中で、監督はスピーディなストーリー展開を実現しました。そのため、彼の作品は時代を超えて視覚的な興奮を持つものとして評価されています。

初めての日本公開は1952年で、映画館での公開を経て1968年にはテレビ放送も行われました。その際、作品名が「地獄の暗黒街」と改題されることとなり、多様な視点からこの映像作品へのアプローチが存在することが伺えます。

『白熱』は、ただのギャング映画を超えて、母への異常な愛情が引き起こす凄惨な運命を描いた作品として、今なお多くの映画ファンに影響を与え続けています。

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