白虎沈没事故

白虎沈没事故

2021年5月27日、来島海峡で発生した海難事故。日本の貨物船「白虎」と韓国籍のケミカルタンカー「ULSAN PIONEER」が衝突し、「白虎」が沈没した。

事故の概要

事故は、2021年5月27日23時55分頃、来島海峡航路の西口付近で発生した。「白虎」は、日本国内の3港を巡る定期航路に就航中のロールオン・ロールオフ貨物船で、神戸港から苅田港へ向かっていた。「ULSAN PIONEER」は、酢酸を積載し中国から大阪港へ向かうケミカルタンカーであった。

来島海峡は、潮流が速く、船舶交通が非常に多い海域であり、日本有数の海の難所として知られている。この海域では、通常の海上衝突予防法に加え、海上交通安全法が適用される。

衝突の結果、「白虎」は左舷後方に損傷を受け、約20分後に転覆、さらに2時間半後には沈没した。「白虎」には12名の乗組員が乗船しており、9名が救助されたものの、船長、一等機関士、二等機関士の3名が行方不明となった。その後、二等機関士、一等機関士の遺体が収容された。

事故の経緯

白虎の航路

「白虎」は2020年6月に竣工した比較的新しい船で、追浜港、神戸港、苅田港を結ぶ定期航路に就航していた。事故当日は神戸港を16時30分に出港し、翌朝に苅田港へ入港する予定だった。

ULSAN PIONEERの航路

「ULSAN PIONEER」は、中国から大阪港へ向かうケミカルタンカーで、事故当時は韓国人8名とミャンマー人5名が乗船していた。

来島海峡の状況

来島海峡は、潮流が非常に速く、時には10ノットに達する。また、船舶の交通量も多く、1日平均429隻が通航する。このため、この海域では、海上衝突予防法と海上交通安全法の両方が適用される。

事故当時は南流で、「白虎」は西水道を航行し、「ULSAN PIONEER」は安芸灘東方から来島海峡航路に向かっていた。

衝突原因と責任

海上衝突予防法では、船舶は原則として右側通行が定められているが、来島海峡航路の出入り口付近では、海上交通安全法に基づき、左側通行となる場所がある。そのため、進路が交差する危険な箇所が存在する。

衝突時、「ULSAN PIONEER」から見て「白虎」は右舷前方に位置しており、海上衝突予防法では「ULSAN PIONEER」側に避航義務が生じる。

刑事裁判

事故当時、「白虎」の操縦を指揮していた二等航海士は、業務上過失致死傷罪で禁錮1年6月、執行猶予3年の判決を受けた。この判決は、控訴審でも支持され、最高裁判所で確定した。

一方、「ULSAN PIONEER」の船長は、当初不起訴となったが、検察審査会による再捜査の結果、再び不起訴となり、捜査は終結した。

適用される航法

事故現場では、港則法および海上交通安全法は適用されず、海上衝突予防法が適用された。この法律に基づき、両船は互いに進路を横切り、衝突のおそれがある状況で接近していたと判断された。また、衝突を避けるための時間的、距離的余裕があったとされた。

時系列

2021年5月27日23時55分頃: 「ULSAN PIONEER」が「白虎」の左舷後方に衝突。
2021年5月28日0時15分頃: 「白虎」が転覆。
2021年5月28日2時45分: 「白虎」が沈没。
2021年5月28日: 巡視艇や周辺を航行していた船舶により、乗組員の救助活動が行われる。
2021年5月30日: 二等機関士の遺体が発見される。
2021年6月1日: 行方不明の船長と一等機関士について、海上保安庁は船内捜索の打ち切りを決定。
2021年8月20日: 沈没した「白虎」の船内から一等機関士の遺体が発見される。
2023年8月26日: 「白虎」が引き揚げられる。
2023年10月25日: 引き揚げられた「白虎」の船内から白骨化した遺体が発見される。
2023年11月20日: 船内で発見された遺体が、船長であったことが判明する。

関連項目

海上衝突予防法
海上交通安全法
来島海峡

外部リンク

BYAKKO - MarineTraffic.com
* ULSAN PIONEER - MarineTraffic.com

この事故は、複雑な海域における航行の難しさと、安全管理の重要性を改めて認識させるものとなった。

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