白虎社

概要

白虎社（びゃっこしゃ）は、日本の前衛舞踏の歴史において、確固たる存在感を示した舞踏集団です。1980年、歴史と文化が息づく京都市に設立され、約14年間にわたり活動を展開しました。

この集団は、日本の現代舞踏に多大な影響を与えた土方巽によって開拓された暗黒舞踏の系譜を色濃く受け継いでいます。特に、先に設立されていた舞踏集団「大駱駝艦」に所属していた舞踏家、大須賀勇が中心となり結成されました。

活動の基盤は、設立地である京都、特に東九条といった関西地方に置かれ、そこから独自の舞踏表現を発信し続けました。彼らの身体から繰り出されるパフォーマンスは、観る者に強烈な印象を与え、国内外で高い評価を得ることになります。

活動と歴史的意義

白虎社の活動範囲は日本国内にとどまらず、国際的な舞台へと広がりました。そのパフォーマンスは、アジア、ヨーロッパ、そして遠く中南米に至るまで、実に13カ国16都市で上演されました。これは、当時の日本の現代舞踏としては極めて広範な活動であり、日本の舞踏を世界に知らしめる上で重要な役割を果たしました。

同時期に活躍した天児牛大率いる山海塾などと共に、白虎社は日本の現代舞踏、特に「舞踏」と呼ばれる独自の身体表現における「第二世代」の旗手と位置づけられています。彼らは第一世代である土方巽や大野一雄らが築いた基盤の上に立ちながらも、それぞれの集団が独自の探求を進め、舞踏という芸術形式をさらに多様かつ深化させました。白虎社のパワフルで土俗的ながらも宇宙的な広がりを感じさせる表現は、この第二世代の特徴をよく表していたと言えるでしょう。

主要演目と評価

白虎社が上演した作品の中には、今なお語り継がれるものがいくつかあります。

「ひばりと寝ジャカ」: この作品は特に高い評価を受け、舞踊批評家協会賞を受賞しました。
「ミナカタクマクスのようなテレビジョン」: 幻想的でユニークなタイトルが印象的な演目です。
「ゾンネンシュターンの夏」: 白虎社の世界観を示す重要な作品の一つとされています。

これらの演目に見られるように、白虎社の作品は、現実と非現実、日常と異界が交錯するような、独特の世界観を創り出しました。

解散と後世への影響

国内外で精力的な活動を展開し、日本の舞踏界において重要な地位を確立した白虎社でしたが、その歴史は1994年に幕を閉じました。しかし、彼らが残した功績や精神は、その後の舞踏家たちに引き継がれています。

その例として、2016年に京都市にオープンしたパフォーマンススペース「KYOTO舞踏館」を拠点に活動する舞踏家、今貂子（いま てんこ）が挙げられます。今貂子は白虎社の出身であり、その経験を通じて培われた身体表現や哲学を現代に繋げています。KYOTO舞踏館は、白虎社のかつての活動拠点ともゆかりの深い東九条エリアに位置しており、白虎社のレガシーがこの地で生き続けていることを示唆しています。

出版物

白虎社の活動や思想の一端を知ることができる資料として、以下の出版物があります。

白虎社 編『白虎社的世界』（白虎社、1986年）

この書籍は、当時の集団の内側からの視点を提供しており、彼らの芸術に対する姿勢や探求の軌跡をたどる上で貴重な手がかりとなります。

白虎社は短期間ではありましたが、その強烈な身体表現と国内外での積極的な活動によって、日本の現代舞踏史、特に「舞踏」の発展において忘れられない足跡を残しました。彼らの遺産は、現在も様々な形で舞踏の世界に影響を与え続けています。

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