白蝋病

白蝋病（はくろうびょう）とは

白蝋病は、別名「振動病」または「振動障害」とも呼ばれる、血管性運動神経障害の一種です。主に、携行型削岩機、チェーンソー、刈払機など、強い振動を伴う工具を長期間にわたって使用する職業の人々に多く見られます。オートバイのプロレーサーやラリードライバーも、長時間のハンドル操作による振動で発症する可能性があります。日本では、特に山林労働者、土木作業員、オートレース選手に多いとされています。

この病気の名称は、血行不良によって指が白蝋（パラフィン）のように白くなることに由来しています。

原因

白蝋病の主な原因は、強い振動を伴う作業を長期間続けることです。振動が血管を収縮させ、血行不良を引き起こすと考えられています。このため、職業病として認識されることが多く、特に振動工具を日常的に使う人々は発症リスクが高いです。

症状

主な症状として、以下のものがあります。

レイノー現象: 手指の血管が痙攣性に収縮し、皮膚が白くなる現象。
しびれ: 手指の慢性的なしびれや感覚の鈍化。
握力低下: 手の握力が低下し、細かい作業が困難になる。
疼痛: 手指や手首、肘、肩などの関節に痛みが生じる。

症状が進行すると、手だけでなく足にも同様の症状が現れることがあります。

治療

白蝋病の根本的な治療法は確立されていませんが、症状の緩和を目的とした治療が行われます。主な治療法は以下の通りです。

理学療法: 温熱療法や運動療法によって、血行を促進し、症状を緩和します。
薬物療法: 血管拡張薬や精神安定剤などを用いて、症状の改善を促します。

また、喫煙は毛細血管を収縮させるため、避けるべきです。寒冷な環境での作業やウインタースポーツも、症状を悪化させる可能性があるため注意が必要です。近年では、アミノ酸の一種であるNアセチルLシステインの摂取が症状改善に効果があったという報告もあります。

労働災害としての白蝋病

労働基準法施行規則別表第1の2において、白蝋病は「さく岩機、鋲打ち機、チェーンソー等の機械器具の使用により身体に振動を与える業務による手指、前腕等の末梢循環障害、末梢神経障害又は運動器障害」として、業務上疾病と明確に定められています。

労災認定基準

国際標準化機構（ISO）では、2001年に振動感覚閾値検査の標準化が行われ、2003年には評価方法も示されました。しかし、この基準は主に手指尖の振動感覚測定に焦点を当てており、他の身体部位や一過性の閾値変動は含まれていません。

日本では、1977年の厚生労働省通達「振動障害の認定基準について」に基づき、振動障害の診断と労災の判断が行われてきました。この認定基準には、冷水浸漬皮膚温検査、痛覚検査、振動感覚閾値検査、握力検査などが含まれますが、検査結果が主観に左右されやすい点が問題視されています。

特に、末梢循環障害の認定においては、レイノー現象の発作時間が短く不規則であるため、医師が実際に確認できることは稀です。また、労働者自身がレイノー現象を理解していない場合、虚偽の申告につながる可能性も指摘されています。さらに、振動障害対策の進展や対象者の高齢化に伴い、典型的な症状が見られにくくなり、従来の基準では対応が難しくなってきているという課題もあります。

労災保険においては、1977年5月28日付けの基発第307号通達「振動障害の認定基準について」に基づき、以下の条件を満たす場合、業務上の疾病として扱われます。

振動工具を扱う業務に相当期間従事していること。
レイノー現象の発現が認められること、または自覚症状があり、末梢循環障害、末梢神経障害、運動機能障害のいずれか、またはすべてが認められること。
* 療養が必要と認められること。

まとめ

白蝋病は、振動工具の使用による職業病として、発症すると日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。早期発見と適切な治療、そして何よりも予防が重要です。労働環境における振動対策や健康管理を徹底し、発症リスクを最小限に抑える努力が求められます。

もう一度検索