百円紙幣

百円紙幣の歴史

百円紙幣は、日本の貨幣制度において重要な役割を果たしてきた紙幣です。明治時代から昭和時代にかけて、様々なデザインや技術が用いられ、その変遷は日本の歴史と深く結びついています。本稿では、百円紙幣の歴史を詳細に解説します。

百円紙幣の概要

百円紙幣は、額面100円の日本銀行券です。一般的には、百円券、百円札とも呼ばれます。明治時代から第二次世界大戦末期まで、実質的に流通している紙幣としては最高額紙幣でした。

百円紙幣の種類

百円紙幣には、以下の8種類が存在します。

1. 旧百円券
2. 改造百円券
3. 甲百円券
4. 乙百円券
5. い百円券
6. ろ百円券
7. A百円券
8. B百円券

このうち、現在法律上有効なのはA百円券とB百円券の2種類です。

各百円紙幣の詳細

旧百円券

1885年（明治18年）に発行された最初の百円紙幣です。表面には大黒天の像が描かれており、「大黒札」とも呼ばれました。裏面には彩紋と偽造罰則文言が記載されています。この紙幣は、当時としては非常に高額だったため、主に銀行間の支払いに使用されていました。発行枚数が少なく、現存数は非常に少ないとされています。

改造百円券

1891年（明治24年）に発行された百円紙幣で、旧百円券の欠点を改良するために発行されました。表面には藤原鎌足の肖像が描かれており、通称「めがね100円」「めがね鎌足」などと呼ばれていました。裏面には彩紋と英語表記の兌換文言が記載されています。旧券同様に高額紙幣であったため、主に銀行間の支払いに用いられました。発行枚数が少なく、現存数も非常に少ないです。

甲百円券

1900年（明治33年）に発行された百円紙幣です。表面には藤原鎌足の肖像と談山神社の全景が描かれており、裏面には日本銀行本店本館が描かれています。裏面の模様が紫色であることから、「裏紫100円」とも呼ばれます。前期と後期で記番号の仕様が異なり、前期は変体仮名と漢数字、後期はアラビア数字で表記されていました。当時としては高額紙幣であったため、主に銀行間の支払いに用いられました。

乙百円券

1930年（昭和5年）に発行された百円紙幣です。表面には聖徳太子と法隆寺夢殿、裏面には法隆寺西院伽藍の全景が描かれています。デザインが非常に緻密で、当時の紙幣製造技術の粋を集めた紙幣でした。通称は「1次100円」です。関東大震災の影響で別デザインの紙幣が発行されなかった経緯があります。

い百円券

1944年（昭和19年）に発行された百円紙幣です。表面のデザインは乙号券の流用ですが、題号が「日本銀行券」に変更され、兌換文言が削除されました。裏面は印刷方式が変更されたためデザインが異なり、簡素化されています。通称は「2次100円」です。

ろ百円券

1945年（昭和20年）に発行された百円紙幣です。表面には聖徳太子の肖像が描かれています。戦時中の物資不足のため、印刷方式や紙幣用紙の仕様が簡素化されています。通称は「3次100円」です。印刷局の能力では製造が追いつかないため、民間印刷会社でも製造されました。

A百円券

1946年（昭和21年）に発行された百円紙幣です。戦後のインフレーション対策として新円切り替えの際に発行されました。表面のデザインはい号券の流用で、新円標識が加えられています。通称は「4次100円」です。印刷は複数の民間印刷会社で分散して行われました。

B百円券

1953年（昭和28年）に発行された百円紙幣です。表面には板垣退助の肖像、裏面には国会議事堂が描かれています。他のB号券と同様の現代的なデザインで、1974年まで発行されました。1957年に発行された百円硬貨と並行して流通していましたが、次第に硬貨に取って代わられました。

百円紙幣の透かし

各百円紙幣には、偽造防止のために様々な透かしが用いられていました。旧百円券は「日本銀行券」の文字と桜花などの図柄、改造百円券は「日本銀行」の文字と菊紋および桐紋、甲百円券は「百圓」の文字と藤の図柄、乙百円券は聖徳太子にゆかりのある図柄、A百円券は一部の製造分を除き「桐」の白透かしによる不定位置透かし、B百円券は「100」の数字と桐の図柄の透かしが用いられていました。

百円紙幣の変遷

百円紙幣は、日本の歴史とともにその姿を変えてきました。明治時代には最高額紙幣として発行され、その後も様々なデザインや技術が試されてきました。第二次世界大戦中や戦後の混乱期には、資材不足などの影響を受けながらも、人々の生活を支える役割を果たしました。

現在の百円紙幣

現在、法律上有効な百円紙幣はA百円券とB百円券の2種類ですが、自動販売機やATMでは使用できません。銀行窓口で現行の紙幣や硬貨への交換が可能です。

まとめ

百円紙幣は、日本の貨幣制度の歴史を語る上で欠かせない存在です。それぞれの紙幣に込められた歴史的背景やデザインの変遷は、私たちに多くのことを教えてくれます。百円紙幣の歴史を振り返ることは、日本の近代史をより深く理解することにつながるでしょう。

この解説が、百円紙幣の歴史と魅力を理解する一助となれば幸いです。

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