百瀬興政

百瀬興政は、1868年（明治元年）に信濃国松本城下で生まれました。旧姓は柳野で、松本藩士の次男として生を受けましたが、後に百瀬家の養子となります。1888年（明治21年）に東京帝国大学医科大学別科を卒業後、故郷の松本で医院を開業し、医師としてのキャリアをスタートさせました。

医師としての活動と並行して、百瀬興政は社会運動にも積極的に参加しました。従兄弟である木下尚江らと共に、普選運動や禁酒運動に取り組み、社会改革を目指しました。また、地域医療の向上にも尽力し、1901年（明治34年）には東筑摩郡看護婦会を組織するなど、地域社会への貢献を積極的に行いました。

さらに、百瀬興政は実業家としての側面も持っており、1922年（大正11年）には松本信用組合（現在の松本信用金庫）を設立し、初代組合長に就任しました。地域の金融発展にも大きく貢献しました。

政治家としての百瀬興政は、1898年（明治31年）に松本町会議員に初当選して以来、松本市会議員を4期務め、その間、議長も経験しました。その後、長野県会議員としても活躍し、3期にわたり県政に貢献しました。1937年（昭和12年）には松本市長に就任し、市政運営を担うことになりました。市長在任中には、1938年（昭和13年）に松本市の市章を制定するなど、市の発展に尽力しました。

1939年（昭和14年）、松本市長在任中に逝去。その生涯は、地域医療の発展、社会運動、地方自治への貢献に捧げられ、多岐にわたる分野でその足跡を残しました。医師、実業家、政治家という多様な顔を持ち、激動の時代の中で地域社会の発展に尽くした人物として、その名は今も語り継がれています。



参考文献

『自治制実施五十周年記念 全国市長銘鑑』帝国自治協会、1938年。
『東筑摩郡・松本市・塩尻市誌 別篇 人名編』東筑摩郡・松本市・塩尻市郷土資料編纂会、1982年。
『日本の歴代市長 第2巻』歴代知事編纂会、1984年。
『全国歴代知事・市長総覧』日外アソシエーツ、2022年。

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