百舌鳥八幡宮

百舌鳥八幡宮

大阪府堺市北区に位置する百舌鳥八幡宮は、古くは府社とされた由緒ある神社です。約1万坪に及ぶ広大な境内は緑豊かで、特に大阪府の天然記念物に指定されている樹齢およそ800年と伝わる巨大なクスノキが、神社の長い歴史を見守るかのように静かに佇んでいます。

歴史

百舌鳥八幡宮の創建に関する伝承は古く、第29代欽明天皇（在位532年 - 571年）の時代にまで遡ります。伝えられるところによれば、神功皇后（じんぐうこうごう）が三韓征伐からの帰途、この地に立ち寄られた際に、幾世代にもわたる天下泰平と万民の安寧を願う御誓願を立てられました。その後、八幡大神（はちまんおおかみ）からの神託を受けたことを機に、この一帯が「万代（もず）」と称されるようになったのが、地名の由来であり、神社の始まりとされています。

天平元年（729年）には、高僧として知られる行基によって、境内に神宮寺「万代寺」が建立されました。この万代寺は、百舌鳥八幡宮の奥の院としての役割を担うこととなります。加えて、後には別の神宮寺である「重楽院」も営まれ、神仏習合の信仰が発展しました。

平安時代に入ると、百舌鳥八幡宮は著しい発展を遂げました。広大な神領・寺領として八百町歩を有し、48ヶ寺もの僧坊と360人もの社家が奉仕する大寺院としての規模を誇ったと記録されています。しかし、保元3年（1158年）には、京都の石清水八幡宮の別宮の一つとなっていたことが当時の記録から窺えます。

また、当社からすぐ西にある御廟山古墳（ごびょうやまこふん）について、現在の羽曳野市にある誉田御廟山古墳ではなく、この御廟山古墳こそが第15代応神天皇（おうじんてんのう）の真の御陵であるという説が古くから唱えられており、これに伴い御廟山古墳も百舌鳥八幡宮の奥の院として位置づけられていました。

戦国時代の度重なる戦乱や、慶長20年（1615年）に終結した大坂夏の陣によって、百舌鳥八幡宮の社殿や伽藍は大きな被害を受け、一時は荒廃しました。しかし、江戸時代に入ると徐々に復興し、特に大坂城代に任じられた歴代の武将たちは、交代の度に当社へ参拝する慣わしがあったと伝わっており、幕府からも重要視されていたことが分かります。

明治時代になると、政府による神仏分離令によって、神宮寺であった万代寺とは明確に区別されることとなりました。重楽院は惜しくも廃寺となりましたが、百舌鳥八幡宮は府社に列せられ、近代的な神社としての地位を確立しました。

現在の社殿は、本殿が享保11年（1726年）に、拝殿が文政13年（1830年）にそれぞれ再建されたものです。これらの建築物は、その後1971年（昭和46年）に大規模な改修が行われ、現在もその姿を留めています。

祭神

百舌鳥八幡宮では、以下の神々が祀られています。

主祭神: 応神天皇（おうじんてんのう）
配祀神: 神功皇后（じんぐうこうごう）、仲哀天皇（ちゅうあいてんのう）、住吉大神（すみよしおおかみ）、春日大神（かすがおおかみ）

応神天皇は武運の神として信仰される八幡神の本体とされ、神功皇后は三韓征伐を指揮したと伝えられる応神天皇の母です。仲哀天皇は応神天皇の父にあたり、住吉大神は神功皇后の三韓征伐に神威を現したとされる海上守護の神、春日大神は藤原氏の氏神です。

境内

約1万坪の広大な境内には、本殿や拝殿をはじめ、様々な社殿や施設が配置されています。

本殿（享保11年再建、1971年改修）
拝殿（文政13年再建、1971年改修）
若宮社
招魂社
絵馬殿
神庫
社務所
稲荷社
放生池
市杵島社
水神社

静かで落ち着いた境内は、参拝者が心を落ち着かせ、神聖な雰囲気を感じられる空間となっています。

文化財

大阪府指定天然記念物 百舌鳥八幡宮のくす

境内のシンボルともいえる巨大なクスノキは、百舌鳥八幡宮の御神木として古くから崇められています。推定樹齢は約800年。胸高径1.8メートル、幹周5.2メートル、樹高25メートルに達するその威容は圧巻です。この老木は長きにわたり神社の歴史を見守り、多くの人々に親しまれており、大阪府の天然記念物に指定されています。

月見祭

百舌鳥八幡宮の年間祭事の中で最も有名で、多くの人で賑わうのが「月見祭」です。この祭りは、旧暦の8月15日、すなわち中秋の名月の前後にあたる土曜日と日曜日の二日間にわたって開催されます（例年9月上旬から10月上旬）。

祭りの最大の見どころは、百舌鳥八幡宮の氏子地域である9つの町によって奉納される、勇壮かつ華麗な「ふとん太鼓」です。重厚な太鼓台の上に布団状の飾りを積み重ねたふとん太鼓が、担ぎ手たちの威勢の良い掛け声とともに境内や周辺の町を練り歩く様は、見物客を魅了します。百舌鳥八幡宮のふとん太鼓は、堺市内で奉納されるふとん太鼓の中でも特に規模が大きく、祭り期間の二日間で延べ10万人を超える見物客が訪れるほどの盛況ぶりです。

月見祭に参加する氏子町は以下の9つです。

赤畑町（宮元として、毎年一番に宮入りします）
梅町
梅北町
土塔町
中百舌鳥町
陵南町
西之町
土師町
本町

交通

百舌鳥八幡宮へのアクセスは、鉄道とバスが利用可能です。

JR阪和線: 百舌鳥駅から南東方向へ徒歩約15分。
南海高野線、南海泉北線、Osaka Metro御堂筋線: 中百舌鳥駅から南西方向へ徒歩約20分。
* 南海高野線: 百舌鳥八幡駅から南方向へ徒歩約15分。

南海バスも利用でき、府道197号線沿いの「もず八幡前」バス停や、府道28号線沿いの「もず八幡前」バス停が最寄りとなります。

周辺

百舌鳥八幡宮の周辺には、かつて神宮寺として関係が深かった万代寺をはじめ、光明院や法華寺といった歴史ある寺院が点在しており、神社と合わせて巡ることで、地域の歴史や文化をより深く感じることができます。

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