的場順三

的場順三：官僚、政治家、そして元号制定の立役者

的場順三（まとば じゅんぞう）は、1934年9月15日生まれの日本の官僚、政治家です。滋賀県出身で、血液型はB型。大蔵省（現財務省）に入省し、国土庁事務次官、内閣官房副長官などを歴任しました。そのキャリアは、官僚としての専門性と政治の中枢での経験を併せ持つ、稀有なものです。

キャリアの始まり

1957年、京都大学経済学部を卒業後、大蔵省に入省。主計局総務課に配属され、同期には保田博（初代国際協力銀行総裁）や内海孚（財務官）らがいました。その後、伊勢崎税務署長、熊本県企画開発部長、主計局各課長、東京税関長などを歴任し、1989年に国土事務次官に就任しました。

内閣官房内政審議室長時代

1985年、内閣官房内閣審議室長（内閣内政審議室長）に就任。当時、内閣官房内閣安全保障室長を務めていた佐々淳行と意気投合し、両室が協力体制を築きました。また、当時の上司であった後藤田正晴内閣官房長官にも気に入られ、後藤田の引退後にはテレビ番組で共演もしています。1986年には、前川リポート（経済構造調整研究会報告）の取りまとめにも尽力しました。

元号「平成」制定への貢献

的場は、昭和から平成への改元準備にも深く関わりました。1985年から1989年にかけて、複数の学者に新元号の候補作成を依頼し、10以上の候補の中から「平成」「修文」「正化」の3つに絞り込みました。「平成」が選ばれた理由は、その意味が『国の内外にも平和が達成される』という政府の方針に合致したこと、そしてアルファベット表記の際に昭和のSと区別できるHになることでした。元号考案者は20年間の極秘事項とされましたが、後に的場によって山本達郎であることが公表されました。

内閣官房副長官時代

2006年、第一次安倍内閣で内閣官房副長官（事務担当）に就任。大蔵省出身で民間での活動期間が長かった的場の起用は異例でしたが、安倍政権が目指す政治主導の促進と「内閣の知恵袋」としての役割を期待されたものでした。しかし、中央省庁から離れていた期間が長かったため現役官僚との人脈が乏しく、首相補佐官や閣僚との軋轢も多かったため、政権運営に支障をきたしたとも評されています。

人物像とエピソード

的場は、内閣府職員から天下り斡旋の禁止を盛り込んだ経済財政諮問会議の民間議員ペーパーの事前説明を受けると、机を叩いて激怒したというエピソードがあります。趣味は旅行で、約150回の海外旅行を経験しています。

大蔵官僚時代には、米価上昇を求める農家からの陳情で矢面に立ち、自民党議員からの圧力にも毅然とした態度で対応しました。議員からは罵倒されたり、灰皿を投げつけられることもありましたが、それらは傍聴席の農民に見せるためのパフォーマンスだと気づき、動じなくなったといいます。

また、小沢一郎内閣官房副長官が内閣五室長を無能だと発言した際には、「私どもは中曽根・後藤田体制では十分にお役に立ちました。もし、私たちが機能しないとすれば、それは上の方の御器量の問題です」と面罵し、佐々淳行を驚かせました。安倍晋太郎とは長年の交流があり、息子である晋三ともメールで連絡を取り合う間柄であり、その関係から官房副長官の就任を受け入れています。

退任後

内閣官房副長官退任後は、大和総研理事長や日本船舶振興会理事などを歴任し、2009年には旭日大綬章を受章しました。著書には、『座して待つのか、日本人』、『IT時代を賢く生きる99の知恵』などがあります。

まとめ

的場順三は、官僚としてキャリアをスタートさせ、政治の中枢で活躍した人物です。その経験は、元号制定という歴史的な出来事にも深く関わり、日本の政治に大きな足跡を残しました。官僚としての専門性、政治家としての洞察力、そして数々のエピソードは、彼の人物像を深く理解する上で欠かせない要素となっています。

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