保田博

保田博：大蔵官僚から初代国際協力銀行総裁へ

保田博（やすだ ひろし、1932年5月14日 - ）は、日本の大蔵官僚であり、元大蔵事務次官、初代国際協力銀行総裁を務めた人物です。その経歴は、戦後の日本経済を支えた官僚の一つの象徴と言えるでしょう。

生い立ちと学歴

広島県呉市（江田島）出身で、父は呉海軍工廠の技官でした。呉市立二河国民学校から呉第一中学校（現在の呉三津田高校）に進学。高校時代はテニス選手として活躍しましたが、肋膜炎を患い、都立日比谷高校に編入。その後、東京大学文科一類に入学し、法学部第1類（私法コース）を卒業しました。さらに法学部第2類（公法コース）へ内部学士入学しています。

大蔵省入省と主計局での活躍

1957年、国家六級職試験を経て大蔵省に入省。同期には、的場順三（内閣官房副長官）、内海孚（財務官）など、後に要職を歴任する人物がいました。保田は、主計局を中心にキャリアを積み重ねます。1973年には福田赳夫蔵相秘書官に就任し、その博識ぶりで大臣答弁を支えました。1979年には公共事業担当主計官として、航空運賃への通行税上乗せを強行し、その手腕を発揮しました。

「ブッタ切りのヤスさん」

主計官時代には、各省庁の予算を厳しく査定し、「ブッタ切りのヤスさん」という異名を持ちました。東京湾横断道路や関西新国際空港などの大型プロジェクトをゼロ査定した逸話は有名です。その一方で、バブル期には、時価つり上げに関与した不動産業者への融資を放置したとして批判を浴びました。

証券スキャンダルと金融不正融資問題

1991年7月、大蔵事務次官に就任直後、証券スキャンダルが発覚。大手証券会社の損失補填問題や、銀行の不正融資問題が相次ぎ表面化し、大蔵省への批判は高まりました。保田は、監督責任を取り、橋本龍太郎蔵相らとともに処分を受けました。

退官後の活動

退官後は、財政金融研究所官民役割分担研究会長を務めた後、1994年5月に日本輸出入銀行総裁に就任。後に海外経済協力基金と合併し、初代国際協力銀行総裁となりました。その後、関西電力顧問、読売国際経済懇話会理事長、日本投資保護基金理事長、資生堂社外監査役、資本市場振興財団理事長、カプコン社外取締役など、様々な役職を歴任しました。

人物像

保田は、主計畑一筋で海外経験がない「国内派」でありながら、国際金融機関のトップを務めるなど、柔軟な対応力も持ち合わせていました。また、その決断力と実行力から、官僚としての確固たる存在感を示していました。

叙勲

2017年秋には、長年の功績が認められ、瑞宝重光章を受章しています。

略歴

1957年4月：大蔵省入省（理財局総務課）
1959年6月：中国財務局理財部
1960年6月：東京国税局調査査察部
1961年6月：主計局総務課
1962年7月：主計局総務課企画係長
1964年7月：泉大津税務署長
1965年7月：農林省農林経済局総務課課長補佐
1967年8月：主計局総務課課長補佐
1968年7月：主計局主計官補佐（公共事業総括、公共事業一係主査）
1971年7月：主計局主計官補佐（厚生一、二係主査）
1973年10月：主計局主計企画官
1973年11月：大蔵大臣秘書官事務取扱
1974年7月：東京国税局間税部長
1974年12月：大臣官房付兼内閣審議官
1976年7月：主計局主計官（厚生、労働担当）
1977年1月：内閣総理大臣[[秘書官]]事務取扱
1978年12月：理財局資金第二課長
1979年7月：主計局主計官（建設、公共事業担当）
1981年6月：大臣官房文書課長
1983年6月：主計局次長
1986年6月：経済企画庁長官官房長
1988年6月：大臣官房長
1990年6月：主計局長
1991年6月：大蔵事務次官
1992年6月：退官

参考文献

『大蔵省主計局』（栗林良光、講談社、1986年8月）
* 『大蔵省 不信の構図』（栗林良光、講談社、1992年12月）

もう一度検索