皿倉登山鉄道帆柱ケーブル線

皿倉山ケーブルカー（帆柱ケーブル線）

福岡県北九州市八幡東区にそびえる帆柱連山の主峰、皿倉山の山頂へと続く重要なアクセス手段が、このケーブルカー路線です。正式名称は「帆柱ケーブル線（ほばしらケーブルせん）」ですが、より一般的には「皿倉山ケーブルカー（さらくらやまケーブルカー）」として親しまれており、皿倉登山鉄道株式会社によって運営されています。美しい自然の中を駆け上がり、山頂からの壮大な眺望や夜景を楽しむための観光路線として機能しています。

路線概要

このケーブルカー路線の営業キロは1.1キロメートルです。日本の鉄道で広く用いられている1067mmの軌間を採用しています。山麓駅と山上駅のわずか二つの駅を結んでおり、その間に途中駅はありません。山麓駅と山上駅間の高低差は約440メートルにも及び、これを約6分という短い時間で結びます。特に、最急勾配は528パーミル（水平距離1000mに対して528mの高低差、角度にして約27.8度）に達する箇所があり、その急峻さが特徴の一つです。

運行情報

運行は通常、20分から30分間隔で行われています。片道所要時間は約6分と短く、手軽に山頂付近まで移動できます。営業時間は季節によって変動します。4月から10月にかけては午前10時から夜10時まで、11月から3月にかけては午前10時から夜8時までの営業となります。ただし、原則として毎週火曜日は定期的な点検作業のため運休します。

最新鋭の車両

現在の車両は、2001年に行われた開業以来初の車両更新で導入されたものです。スイスのCWA社が製造した2両編成で運用されており、それぞれ異なる愛称と車体色を持ちます。黄色い車体は「はるか」、青い車体は「かなた」と名付けられています。最大の特徴は、天井まで広がる全面サンルーフ設計です。これにより、乗客はまるで空中にいるかのような感覚で、周囲の自然や眼下に広がる景色、そして夜には満点の星空や煌めく夜景を堪能できます。この新車両導入に伴い、電力供給方式が蓄電池式に変更されたため、それまで景観を遮っていた架線や架線柱が撤去され、眺望がさらに向上しました。運転速度は最高18km/h（秒速5.0メートル）に達し、導入当時は国内のケーブルカーで最速を誇りました。夏期の暑さ対策としては、車両自体には冷房装置がありませんが、駅ホームに設置された定置型クーラーから、停車中に窓を通して車内に冷風を送り込むというユニークな方法がとられています。また、夜間運行時には、車内照明を落とすことで窓に映り込む光を減らし、夜景をよりクリアに楽しめるよう配慮されています。ちなみに、開業当初の1957年から2000年の更新まで使用されていたのは、日立製作所製の1号車「ほばしら」と2号車「さらくら」でした。

歴史の歩み

帆柱ケーブル線は、1957年（昭和32年）11月12日に運行を開始しました。当時の駅名は山麓側が尾倉公園駅、山上側が帆柱山駅でした。1985年（昭和60年）4月13日には現在の山麓駅、山上駅へと駅名が改称されます。開業から40年以上活躍した初代車両は、設備更新のため2000年（平成12年）10月9日をもって運行を終え、路線も一時休止となります。翌2001年（平成13年）6月30日には、スイス製の新型車両を導入して運行を再開し、現在に至ります。一般向けに使用される愛称「皿倉山ケーブルカー」が正式に用いられるようになったのは、比較的最近の2015年（平成27年）4月1日からです。

アクセスと接続

路線の起終点である山麓駅と山上駅へのアクセス方法です。山麓駅へは、JR鹿児島本線の八幡駅から無料シャトルバスが運行されており、約10分で到着します（運行日時は要確認）。また、福岡方面からの高速バス「いとうづ号」や香月快速などが停車する「高速皿倉山ケーブル」バス停からは徒歩約5分、西鉄バスの帆柱登山口バス停留所からも徒歩約10分圏内です。さらに、特定期間にはJR小倉駅やTHE OUTLETS KITAKYUSHUからの無料シャトルバスも運行されることがあります。山上駅に到着後は、皿倉山スロープカーに乗り継ぐことで、さらに山頂の展望台までアクセスすることが可能です（このスロープカーは、2006年8月31日までは帆柱スカイラインリフトとして運行されていました）。

帆柱ケーブル線は、急勾配を登るスリル、最新車両からの開放的な眺望、そして素晴らしい夜景観賞といった魅力を持つ、皿倉山観光に欠かせない交通機関です。

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