益田一

益田一：水中写真と魚類研究のパイオニア

益田一（ますだ はじめ）は、1921年6月18日に東京で生まれ、2005年12月8日に脳梗塞で亡くなった日本の写真家であり、魚類研究家です。慶應義塾大学文学部独文科を卒業後、1960年代から水中写真家としての活動を開始し、数多くの魚類図鑑を刊行しました。

水中写真家としての革新的な活動

益田は、「益田海洋生物研究グループ」を結成し、当時としては画期的なカラー写真による生態観察の成果を次々と発表しました。これらの活動は、海洋関係の学会に新たな視点をもたらし、大きな影響を与えました。1964年には、伊豆海洋公園（静岡県伊東市）に「伊豆海洋公園ダイビングセンター」を設立し、所長を務めました。また、東海大学の海洋学部アクアラング訓練所を改称し、潜水訓練センターを設立するなど、人材育成にも力を注ぎました（潜水訓練センターは1985年に閉鎖）。1974年には、株式会社益田海洋プロダクションを設立し、代表取締役会長として事業を展開しました。

フィッシュウォッチングの提唱者

益田は、自ら水中に入り魚を観察する「フィッシュウォッチング」を日本で初めて一般ダイバーに提唱しました。これは、日本の海洋自然観察運動の礎となり、多くの人々に海への関心を抱かせました。伊豆海洋公園での活動を通じて、中村宏治、小林安雅、瓜生知史といった水中写真家や著述家にも大きな影響を与えました。

主な著作と共著

益田は、数多くの著作と共著を残しており、その業績は多岐にわたります。

主な著作:
『補訂版 海水魚』 東海大学出版会、1984年
『海中図鑑 伊豆の海水魚』 東海大学出版会、1989年
『海洋生物ガイドブック』 東海大学出版会、1999年

主な共著:
『日本の海洋動物』畑正憲文 学習研究社、1969年
『続 日本の海洋動物』畑正憲文 学習研究社、1970年
『海底の神秘』内田亨,広崎芳次,益田一,益田一海洋生物研究グループ (著) 毎日新聞社 1971
『カラー 海の生きもの― 魚類』岡田弥一郎、益田一海洋生物研究グループ　山と渓谷社 (山渓カラーガイド)1971
『カラー 海の生きもの―海岸動物』鈴木克美、 益田一海洋生物研究グループ 山と渓谷社 (山渓カラーガイド〈54〉)1972
『海』 畑正憲文・構成,益田海洋グループ写真 1972. (ちくま少年図書館 別巻2)
『日本列島の魚―Sea fantasy』阿部宗明、 益田一海洋生物研究グループ 毎日新聞社 1972
『日本産魚類生態大図鑑』（小林安雅共著） 東海大学出版会、1994年
『世界の海水魚 太平洋・インド洋編』（ジェラルド・R・アレン共著） 山と溪谷社、1987年
* 『Fish watching guide 伊豆』（瀬能宏共編） 海游舎、1999年

これらの著作は、益田の観察眼と研究成果を広く伝える上で重要な役割を果たしました。特に、『日本産魚類生態大図鑑』は、日本における魚類研究の重要な資料となっています。

益田一の影響

益田一の功績は、単に水中写真や魚類研究にとどまらず、海洋自然観察運動の発展に大きく貢献しました。彼が提唱したフィッシュウォッチングは、多くの人々が海に親しみ、その魅力を発見するきっかけとなりました。また、彼の残した著作や活動は、後進の研究者や水中写真家にとって、貴重な指針となっています。

その他

益田一の名前は、シマキツネベラの学名である`masudai`にその名を残しています。これは、彼が海洋生物研究に与えた影響の大きさを物語るものです。

益田一の業績は、日本の海洋生物学の発展に不可欠であり、彼の情熱と探究心は、今後も多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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