ちくま少年図書館

『ちくま少年図書館』は、筑摩書房が1970年から1986年にかけて刊行した、少年少女向けのノンフィクションシリーズです。創刊当初は、物理学者の湯川秀樹、小児科医の松田道雄、文芸評論家の臼井吉見が監修を務めていましたが、後に監修者の名前は記載されなくなりました。

概要

このシリーズは、日本の著者による書き下ろし作品が中心ですが、一部には海外の書籍の翻訳や外国の民話集も含まれています。その内容は多岐にわたり、「心の相談室」「歴史の本」「科学の本」「創造の広場」「社会の本」「AVの本」など、様々なジャンルを網羅しています。子供たちが興味を持つであろうテーマを深く掘り下げ、知的好奇心を刺激する内容となっています。

1986年には、全100巻の刊行をもって、第33回産経児童出版文化賞大賞を受賞しました。これは、シリーズ全体の質の高さと、子供たちの教育に貢献したことが認められた結果と言えるでしょう。シリーズ刊行終了後、一部の作品は『ちくま文庫』などで再刊されていますが、このシリーズのみで刊行された作品も多く、貴重な存在となっています。

また、『ちくま少年図書館』の兄弟シリーズとして、『ちくま少年文学館』『ちくま少年文庫』が存在します。これらのシリーズもまた、子供たちの成長に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

刊行リスト（一部）

以下に、『ちくま少年図書館』の主な刊行リストを挙げます。

1. 『恋愛なんかやめておけ』松田道雄、加古里子絵、1970年
2. 『恐しい本』長谷川四郎、落合茂絵、1970年
3. 『君の可能性なぜ学校に行くのか』斎藤喜博、渡辺皓司絵、1970年
4. 『チンパンジーを追って』伊谷純一郎、1970年
5. 『生きるアメーバから人まで』畑正憲、新井苑子絵、1970年
6. 『マンモスをたずねて科学者の夢』井尻正二、1970年
7. 『スピード物語夢をひらく技術』石山光秋著、斎藤由光イラスト、1970年
8. 『愛の本』真野さよ、絵峯梨花、1970年
9. 『失われた歴史』佃実夫著、金井久美子絵、1971年
10. 『心の灯考古学への情熱』藤森栄一、1971年
11. 『ぼくは報道する民族のすがた・声』本多勝一、1971年
12. 『心の底をのぞいたら心の研究』なだいなだ、一色智嘉子絵、1971年
13. 『一億年の旅花の中の秘密』新関滋也、梶原恵輔絵、1971年
14. 『いのちを守る医者のたたかい』川上武、森まこと絵、1971年
15. 『真実と勇気の記録』宇佐美承、絵山本美智代、1971年
16. 『人類最後の日自然の復讐』宮脇昭、田中正三絵、1972年
17. 『不良少年物語』佐藤忠男、朝倉摂絵、1972年
18. 『天文台日記』石田五郎、木川秀雄絵、1972年
19. 『ひとが生まれる五人の日本人の肖像』鶴見俊輔、絵佐々木マキ、1972年
20. 『ネズミが地球を征服する?』日高敏隆、後藤喜久子絵、1972年

（中略）

98. 『悲しい魔女―インドネシアの物語』松本亮、1986年
99. 『かがやけ、野のいのち―農に生きる』星寛治、1986年
100. 『大地と海と人間―東南アジアをつくった人びと』鶴見良行、1986年

別巻

1. 『デザイン入門』日野永一、1971年
2. 『海』畑正憲文・構成、益田海洋グループ写真、1972年

これらのリストからもわかるように、『ちくま少年図書館』は、科学、歴史、社会、文学など、幅広い分野をカバーしており、子供たちの興味や関心を刺激し、多角的な視野を育むことを目指していました。

特徴

多様なジャンル: 子供たちが様々な分野に触れられるように、幅広いジャンルを扱っています。これにより、子供たちは自分の興味関心を発見し、知的好奇心を深めることができました。
良質な文章: 著名な作家や専門家が執筆しており、文章の質が高いのが特徴です。読みやすく、わかりやすい文章で、子供たちの読解力や表現力を高めるのに役立ちました。
豊富な図版: イラストや写真が豊富に使われており、子供たちが内容を理解しやすいように工夫されています。視覚的にも楽しめるため、読書への抵抗感を減らす効果もありました。
教育的価値: 単なる知識の伝達だけでなく、子供たちが自分で考え、学ぶ力を育むことを重視しています。読書を通じて、子供たちは社会や自然に対する理解を深め、人間として成長していくことが期待されました。

影響

『ちくま少年図書館』は、出版当時、多くの子供たちに読まれ、その後の成長に大きな影響を与えたと考えられます。また、その教育的な価値の高さから、現在でも教育関係者や保護者から高く評価されています。

補足

一部の書籍データにおいて、『処女峰アンナプルナ』と『罪なき殺し屋たち』が『ちくま少年図書館』として記録されている場合がありますが、これらは実際には『ちくま少年文庫』として刊行されたものです。

外部リンク

* 筑摩書房

『ちくま少年図書館』は、単なる児童書の枠を超え、子供たちの成長を支え、未来を拓くための重要な役割を果たしました。その刊行は、日本の出版文化においても特筆すべき出来事だったと言えるでしょう。

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