盛岡劇場

盛岡劇場：盛岡の文化を彩る劇場

盛岡劇場は、岩手県盛岡市松尾町に位置する劇場です。盛岡市文化振興事業団によって運営され、演劇、音楽、舞踊など、多様な芸術文化の発信拠点として、地域に根ざした活動を展開しています。

歴史

旧盛岡劇場の誕生と大正ロマン

盛岡劇場の歴史は、1913年（大正2年）に遡ります。当時の有志が出資し、新馬町（現在の松尾町）に「盛岡劇場」が開館しました。これは、日本初の洋式劇場である帝国劇場の開場からわずか2年後であり、東北地方初の近代的演劇専用劇場として注目を集めました。設計は、東京駅や岩手銀行中ノ橋支店などを手がけた辰野・葛西建築事務所が担当しました。

こけら落とし公演は、7代目松本幸四郎一座によるもので、歌舞伎、新国劇、喜劇など様々な演劇が上演されました。また、活動写真や音楽会、芸妓衆による演芸会なども開催され、盛岡の文化を牽引する存在となりました。関東大震災発生時には、震災被災者救援のための催しが開かれるなど、劇場は単なるエンターテイメントの場を超え、市民にとって心の拠り所としての役割も果たしました。宮沢賢治も、花巻農学校教師時代にチャップリンの映画や少女歌劇を観るため、花巻から足繁く通ったと言われています。

しかし、太平洋戦争の影響や建物の老朽化により、劇場は徐々に衰退し、閉鎖同然の状態となってしまいました。

谷村文化センターとしての再建と閉鎖

戦後、「みちのくの電信王」と呼ばれた花巻市出身の実業家であり政治家でもあった谷村貞治の支援により、劇場は全面改装され、1957年（昭和32年）7月21日に「谷村文化センター」として再建されました。谷村は演劇への深い理解を持ち、地元文化の復興を願ってこの再建を支援しました。

再建後は、新劇公演や講演会などが開催され、1949年（昭和24年）に始まった盛岡文士劇も、第8回公演から谷村文化センターで開催されるようになりました。しかし、テレビの普及や映画館の新設など娯楽の多様化が進み、観客数は減少の一途をたどりました。1968年（昭和43年）に谷村が亡くなると、劇場は廃屋同然となり、1983年（昭和58年）3月20日に開催された「盛岡劇場お別れ会」をもって閉鎖・解体され、旧盛岡劇場の70年の歴史に幕を閉じました。

新盛岡劇場の誕生と現在

谷村文化センター解体後、市民の間で盛岡劇場復活を望む声が高まり、盛岡市は市制100周年記念事業の一環として劇場の再建を決定しました。1990年（平成2年）7月1日、河南公民館を併設し、最新の設備を備えた新たな劇場として、かつての跡地に新盛岡劇場が誕生しました。こけら落とし公演は、旧盛岡劇場のこけら落とし公演を務めた7代目松本幸四郎の孫である9代目松本幸四郎一座によって行われ、大いに賑わいました。

1995年には、盛岡市在住の作家・高橋克彦や岩手日報社の村田源一朗らが中心となり、「盛岡文士劇」が復活。以降、年末恒例の公演として続けられています。復活した盛岡文士劇は、地元作家や地元放送局のアナウンサー、その他著名人などが出演し、公演の模様がテレビでも放送されるなど、人気を博しています。

2004年（平成16年）には、財団法人地域創造 (JAFRA) が主催する第1回JAFRAアワード「総務大臣賞」を受賞しました。

施設概要

所在地: 盛岡市松尾町3番1号
交通アクセス:
自動車・タクシー：盛岡駅から10分
バス：盛岡バスセンター下車徒歩5分、南大通一丁目下車徒歩2分
メインホール: 固定席511席、親子席7席。演劇、舞踊、古典芸能、コンサートなど、様々な公演に対応。
タウンホール: 演奏会、演劇、コンサートなど、利用状況に応じて舞台や客席を自由に設定できるオープンスペース。
リハーサル室: 第1リハーサル室（98.79平方メートル）と第2リハーサル室（56.10平方メートル）の2室があり、バレエ、舞踊、演劇、音楽などのレッスンやリハーサルに利用可能。
河南公民館: 盛岡劇場に併設された公民館。ミニホール、研修室、美術工芸室、視聴覚室、音楽練習室、和室、調理室、会議室などを備え、地域住民の交流や学習の場を提供。

利用状況

年末恒例の「盛岡文士劇」のほか、「もりげき八時の芝居小屋」や「もりげきライヴ」などの定期公演が行われています。また、盛岡市文化振興事業団主催の演劇公演や講座・ワークショップなども開催され、盛岡市民の芸術文化活動をサポートしています。

盛岡劇場は、過去の歴史を大切にしながら、新たな文化創造の拠点として、これからも盛岡の芸術文化を牽引していくことでしょう。

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