盛岡文士劇

盛岡文士劇は、岩手県盛岡市で毎年年末に上演される、地域に根差した演劇です。この劇の大きな特徴は、岩手県や盛岡市にゆかりのある作家、文化人、そして地元の放送局のアナウンサーなどが出演することです。1949年に作家の鈴木彦次郎氏を中心に始まりましたが、一時中断。その後、1995年に作家の高橋克彦氏が発起人となり復活し、現在に至っています。

公演は二部構成で、それぞれ現代劇と時代劇が上演されます。現代劇では、地元の放送局アナウンサーが中心となり、盛岡を舞台にした物語が展開されます。特徴的なのは、盛岡弁をふんだんに取り入れた台本で、出演者のコミカルな演技や、盛岡弁の不慣れなアナウンサーによるぎこちない方言が、観客の笑いを誘います。また、アドリブが飛び交うことも多く、会場は常に笑い声に包まれます。時にはスペシャルゲストが登場することもあり、観客を大いに楽しませます。

一方、時代劇は、盛岡にゆかりのある作家たちが中心となって演じられます。有名な映画のプロットを翻案したコメディや人情劇が多く、こちらもまた観客を楽しませる要素が満載です。どちらの演題も、プロの役者ではない素人ならではの温かみや、ハプニングが魅力となっています。

二つの演題の間には、盛岡市長をはじめとする地元の名士たちが、裃姿で登場し口上を述べます。これもまた、盛岡文士劇の名物の一つとして親しまれています。

公演は、盛岡劇場で毎年11月末から12月初頭の土日に開催され、チケットは10月に発売されます。また、IBC岩手放送が独占でテレビ放映しており、公演後約1ヶ月後に岩手県内で放送されます。これにより、会場に足を運べない方も、盛岡文士劇の雰囲気を楽しむことができます。

出演者については、原則として固定メンバーはいませんが、地元放送局のアナウンサーである高橋（克）氏（時代劇）と畑中氏（現代劇）は、復活公演から2017年まで皆勤賞を続けていました。現代劇には、IBC岩手放送のアナウンサーが複数名出演するほか、元テレビ岩手のアナウンサーである高橋佳代子氏や高橋美佳氏、そして、元IBC岩手放送アナウンサーで、現在は方言指導家やもりおか歴史文化館館長を務める畑中美耶子氏が出演しています。畑中氏は、毎回花道から登場し、客との盛岡弁での会話を繰り広げるのが恒例です。また、他の出演アナウンサーに盛岡弁を指導する役割も担っています。

時代劇には、NHK盛岡放送局、IBC岩手放送、エフエム岩手のアナウンサー、岩手日報や読売新聞、朝日新聞の記者、そして作家の斎藤純氏、北上秋彦氏、脚本家の内館牧子氏、盛岡市長、発起人の高橋克彦氏などが名を連ねています。高橋克彦氏は、2016年以降は声のみの出演となり、2019年以降は出演していません。

スタッフとしては、劇作家・朗読家の小野寺瑞穂氏、劇作家・演出家の藤原正教氏、演出家で会社社長の浅沼久氏、脚本家・作家の道又力氏などが公演を支えています。

盛岡文士劇は、地域文化の振興に貢献するだけでなく、観客に笑顔と感動を届ける、盛岡市民にとってかけがえのないイベントとなっています。

もう一度検索