盤状クリステ類

盤状クリステ類（Discicristata）

盤状クリステ類（学名：Discicristata）は、真核生物の中に設けられた主要な分類群の一つです。このグループを特徴づける最も顕著な形質は、細胞内小器官であるミトコンドリアが持つクリステと呼ばれるひだ状の構造が、平らな盤状、あるいはディスク状、扇型、団扇型などと表現される独特な形をしている点にあります。

真核生物のミトコンドリア内に存在するクリステは、その形態によっていくつかのタイプに分類されるのが一般的です。主に、平坦な板状 (flat cristae)、細長い管状 (tubular cristae)、そして盤状 (disc-shaped cristae) の三種類に大別されます。これらのうち、盤状のクリステを持つ生物は全体としては比較的少数派であるため、この特異な形態が、それを持つ生物群が共通の祖先から派生した単系統群である可能性を示唆していました。

初期の分類体系では、主に形態的な観察に基づいて生物が分類されていましたが、近年の分子系統学的な手法、特にDNAやRNAなどの分子情報を比較分析する研究が進展したことにより、形態から推測されていた系統関係が検証されるようになりました。盤状クリステ類の単系統性についても、分子系統学的手法を用いた詳細な解析によって強く支持されるに至りました。これを受けて、盤状クリステ類は現在では真核生物の進化的な歴史の中で重要な位置を占めるスーパーグループの一つとして広く認識されています。

分類学的な位置づけに関しては、真核生物の「エクスカバータ」と呼ばれるスーパーグループの下位分類として扱われる場合と、エクスカバータとは独立した、あるいはそれに並列する別個のスーパーグループとして位置づけられる場合とがあり、研究者によって見解が分かれることもありますが、盤状クリステ類として認識される主要な構成員は共通しています。

盤状クリステ類に含まれる代表的なグループとしては、ユーグレノゾア（Euglenozoa）とヘテロロボサ（Heterolobosea）が挙げられます。ユーグレノゾアには、光合成を行うことで知られるミドリムシ（ユーグレナ）などが含まれ、ヘテロロボサには、アメーバ運動と鞭毛運動の両方の形態をとりうるネグレリアなどが含まれます。

このように、盤状クリステ類は、ミトコンドリアのクリステという微細な構造の形態を手がかりに発見され、分子系統学によってその実態が明らかになった、真核生物の多様性を理解する上で重要なグループです。その独特な特徴は、真核生物が進化の過程で獲得してきた多様な細胞構造の一例として注目されています。

参考文献として、井上勲氏による「『植物になる』という進化：ハテナをめぐって」と、Simpson AGB, Inagaki Y, Roger AJによる2006年の論文「Comprehensive multigene phylogenies of excavate protists reveal the evolutionary positions of "primitive" eukaryotes」が挙げられます。

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