目切遺跡

目切遺跡：縄文時代の息吹を感じる複合遺跡

長野県岡谷市長地鎮に位置する目切遺跡は、縄文時代から中世にかけての複合遺跡として知られています。特に縄文時代の出土遺物は、岡谷市の指定有形文化財に指定されているほか、文化庁認定の日本遺産「星降る中部高地の縄文世界」の構成文化財としても重要な位置を占めています。

遺跡の概要

目切遺跡では、縄文時代の早期から晩期にかけての集落遺構と、当時の生活を物語る様々な遺物が発見されています。中でも最も繁栄したのは縄文時代中期、約4500年前の頃でした。遺跡からは、当時の人々の住居跡である竪穴建物跡が112棟も発見されており、そのうち79棟が縄文中期のものとされています。これらの住居跡からは、精巧な文様が施された土器や、当時の生活に使われた石器類が多数出土しており、縄文時代の人々の豊かな文化を今に伝えています。

マメ科植物の発見

2012年、目切遺跡から約4000～4500年前の縄文時代中期の土層より、アズキやツルマメの仲間など、マメ科植物の炭化した種子が68点も発掘されたことが発表されました。この発見は、地元考古学研究者と岡谷市教育委員会が協力し、市内の複数の遺跡から発掘された土器の圧痕や、目切遺跡の建物跡の炭化物を調査した結果によるものです。発見されたマメは長径約3～7ミリで、長野県内の縄文遺跡でこれほど多くのマメ科植物が検出された例は過去にありません。ただし、これらのマメが栽培されたものかどうかは、現時点では明確にはなっていません。

この発見は、「縄文時代は農耕社会ではない」という従来の認識に対し、諏訪市出身の考古学者である藤森栄一が提唱した「縄文農耕論」に一石を投じるものとして注目されています。明治大学黒曜石研究センター客員教授の会田進は、今回の発見が縄文農耕論を立証するものとは断言できないとしつつも、「見つかった種子の数から、除草などの管理が行われていた可能性は否定できない。縄文時代中期に、主食となり得るマメの栽培化に向けて動き出し、農耕社会の入り口に入りつつあった可能性を示唆している」と指摘しています。

文化財

目切遺跡から出土した遺物のうち、以下に示すものは岡谷市指定有形文化財に指定されています。

壺を持つ妊婦土偶：縄文時代中期の土偶で、当時の人々の精神世界や信仰を垣間見ることができます。
顔面把手付深鉢形土器：縄文時代中期の土器で、顔を模した把手が特徴的です。同様の土器は他の遺跡でも出土していますが、目切遺跡と榎垣外遺跡から出土したものは、顔面把手が内側を向いているという特徴があります。ちなみに海戸遺跡から出土した顔面把手付深鉢形土器は国の重要文化財に指定されており、顔面把手が外側を向いているのが特徴です。

「壺を持つ妊婦土偶」は、2009年に大英博物館や東京国立博物館で開催された展覧会でも展示され、国際的にも高い評価を受けています。

周辺の遺跡

岡谷市内には、目切遺跡と同時期、あるいは異なる時期の遺跡が数多く存在します。

岡谷丸山遺跡
梨久保遺跡
海戸遺跡
垣外遺跡
禅海塚遺跡
橋原遺跡
花上寺遺跡
清水田遺跡
樋沢遺跡
間下丸山遺跡
志平遺跡
上向遺跡
* コウモリ塚古墳

これらの遺跡を巡ることで、岡谷市周辺における縄文時代から古代にかけての歴史をより深く理解することができます。

目切遺跡は、縄文時代の豊かな文化と、当時の人々の生活を今に伝える貴重な遺跡です。岡谷市を訪れる際には、ぜひ足を運んでみてください。

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