目的的行為論

目的的行為論について

目的的行為論（もくてきてきこういろん）は、刑法における重要な理論であり、行為を目的的意思に基づくものとして限定する考え方です。この学説は、第二次世界大戦前からドイツで発展し、フォン・ウェーバーやハンス・ヴェルツェルによって主唱され、その他にもマウラッハやアルミン・カウフマンなどによって強化されてきました。これらの学者たちは、新カント学派の目的論的思考に対する批判を背景に、この理論を構築しました。

一般的に犯罪は、特定の構成要件に該当する違法かつ有責な行為と定義されますが、この「行為」についての理解を提供するのが目的的行為論です。この論では、「人が特定の目的を持って行う行動」のみを刑法上の「行為」として認識すべきであると主張されます。つまり、行為の本質を「目的性」に求めるのです。

目的的行為論における「目的性」とは、事前に目標を設定し、その実現のために手段を選択し、選んだ手段を使って目標に向かって行動することを指します。この「目的性」は、法以前のものであり、立法者や刑法に対しても拘束力を持つため、特異な方法論的特徴を有しています。

ヴェルツェルはリヒャルト・ホエーニッヒスバルトやニコライ・ハルトマンの研究を参照しつつ、現実の生活世界に存在する人間の行動の本質を探求しました。ここで重視されるのは、目標を達成するために選択された手段を制御・操作する目的的意思です。彼は、この目的的意思こそが人間行為の本質的要素であり、別個のものとすることはできないと述べています。

この理論により、従来、「行為」と責任要素として分けられていた故意が密接に結びつくことになり、故意は主観的な構成要素であり、同時に主観的な違法要素でもあるとされるようになりました。ヴェルツェルの目的的行為論は、旧派や新派の自然主義的な欠陥を克服し、行為の存在構造に目を向けることによって規範主義的価値志向に対抗する形で、従来の行為論に一石を投じました。

日本においては、戦後すぐにヴェルツェルの理念が平野龍一や平場安治、福田平らによって紹介され、福田がヴェルツェル流、木村亀二がマウラッハ流、金沢文雄がカウフマン流の目的的行為論を採用しました。日本では現在、この理論は少数派ながらも影響が見られ、特に故意に関する理解が広まっています。

一方で、目的的行為論は目的性を持たない過失犯や不作為犯に行為を認めることができないのではないかという批判も存在しています。このように、本理論は刑法の理解において重要な役割を果たしているものの、異なる見解や提案も捉えられています。今後の議論においても、目的的行為論は興味深い課題を提供し続けるでしょう。

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