直入郡

直入郡：大分県に存在した歴史深い郡の変遷

直入郡は、大分県（旧豊後国）に存在した郡です。その歴史は古く、古代から近現代まで、幾多の変遷を遂げてきました。本稿では、文献史料に基づき、直入郡の歴史を詳細に解説します。

古代からの郡域

740年頃成立とされる『豊後国風土記』には、豊後国の8つの郡の1つとして直入郡が記載されています。同書によれば、郡名の由来は、かつてこの地に真っ直ぐに伸びた大きな桑の木があったことにちなむとされています。当時の郡域は、現在の竹田市全域と由布市の一部に相当すると考えられています。

931年から938年にかけて成立した『和名類聚抄』には、直入郡に朽網、三宅、直入、柏原の4郷があったと記されています。これらの郷の存在は、直入郡が古代においても重要な地域であったことを示唆しています。また、『延喜式神名帳』にも郡内の式内社が記載されており、古代における宗教的・文化的側面も垣間見ることができます。

近世以降の変遷

近世以降、直入郡は幾度かの行政区域変更を経て現在の形に到りました。明治維新後の廃藩置県、そして第1次府県統合により、直入郡は完全に大分県の管轄となりました。1878年（明治11年）の郡区町村編制法施行により、行政区画としての直入郡が正式に発足し、郡役所が竹田町に置かれました。

明治22年（1889年）の町村制施行により、直入郡内には複数の町村が誕生しました。その後、合併や町制施行などが繰り返し行われ、郡域内の行政区分は大きく変化していきました。例として、1906年（明治39年）には玉来村が町制施行して玉来町となり、1920年（大正9年）には久住村が町制施行して久住町となりました。

太平洋戦争後の昭和時代には、さらに大規模な合併が進行します。1942年（昭和17年）には複数の町村が合併して新たな竹田町が成立しました。その後も町村合併は続き、1954年（昭和29年）には竹田町など複数の町村が合併して竹田市が誕生し、郡から離脱しました。1955年（昭和30年）には、久住町と都野村が合併して久住都町（後に久住町に改称）が発足し、長湯町と下竹田村が合併して直入町が発足しました。

最終的に、2005年（平成17年）4月1日、荻町、久住町、直入町が竹田市と合併し、改めて竹田市が発足。これにより、直入郡は消滅しました。

まとめ

直入郡は、古代から現代に至るまで、その歴史の中で幾度も変遷を繰り返してきました。古代の文献にその名が登場することから、長い歴史を持つ郡であったことがわかります。近世以降も、明治時代の郡区町村編制法、町村制、そして昭和期の昭和大合併など、様々な制度改革の影響を受けながら、その行政区域は変化し続けてきました。直入郡の歴史を振り返ることで、日本の地方行政制度の変遷の一端を垣間見ることができます。その歴史的経緯は、現代の竹田市の礎を築いた重要な出来事であったと言えるでしょう。

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