相模トラフ

相模トラフとは

相模トラフは、関東地方の南沖に位置する海底の溝であり、フィリピン海プレートが北米プレートの下に沈み込む場所です。この沈み込み帯は、過去にマグニチュード8クラスの巨大地震を繰り返し発生させており、そのメカニズムの解明と防災対策が重要な課題となっています。

相模トラフの分類

相模トラフは、以下の3つの側面から分類できます。

1. 海底地形としての相模トラフ: 相模湾の二宮海底谷付近から伊豆大島・房総半島間の狭窄部までを指す狭義の相模トラフと、さらに房総海底谷や鴨川海底谷を含む広義の相模トラフがあります。
2. テクトニクスとしての相模トラフ: 伊豆衝突帯から日本海溝との三重点まで、約250kmに及ぶ沈み込み帯全体を指します。この範囲には、相模トラフだけでなく、周辺の海底谷や海盆も含まれます。
3. プレート境界断層としての相模トラフ: フィリピン海プレートの上面に形成された巨大な断層（メガスラスト）を指します。この断層は、関東地震などの地震を引き起こすだけでなく、スロースリップ現象も発生させています。

相模トラフの特徴

相模トラフ周辺は、フィリピン海プレート、太平洋プレート、ユーラシアプレート、北米プレートの4つのプレートが複雑に重なり合う場所です。太平洋プレートは、日本海溝で北米プレートの下に沈み込んだ後、さらにフィリピン海プレートの下に沈み込みます。フィリピン海プレートは、相模トラフで北米プレートの下に沈み込み、丹沢山地や房総半島東方沖で隆起しています。この複雑なプレートの動きが、相模トラフ周辺の地震活動を活発化させています。

相模トラフの陸地側延長線上には、活断層である国府津-松田-神縄断層帯が伸びており、この断層帯は丹沢山地から富士山付近を通り、駿河トラフへと続いています。

三重会合点

房総半島南東沖には、相模トラフ、日本海溝、伊豆・小笠原[[海溝]]の3つが出会う三重会合点があります。この場所では、フィリピン海プレートと太平洋プレートが北米プレートの下に沈み込んでいます。三重会合点は、音響探査の結果、相模トラフの最深部ではなく、坂東深海盆の北端付近の浅い場所に位置すると考えられています。深海盆の大部分はフィリピン海プレートと太平洋プレート上にあり、北米プレート上にはほとんどありません。

相模トラフにおける地震

相模トラフ周辺は、過去に多くの地震が発生している地震多発地帯です。特に、1703年の元禄地震や1923年の関東大震災のようなマグニチュード7から8クラスの巨大地震が繰り返し発生しています。

主な地震

プレート間地震: 陸側のプレートとフィリピン海プレートの境界で発生する地震。
1293年 永仁関東地震 M7.0-7.5
1703年 元禄地震 M7.9-8.2
1923年 大正関東地震 M7.9
プレート内地震: フィリピン海プレート内部で発生する地震。
1782年 天明小田原地震 M7.0
1853年 嘉永小田原地震 M6.7±0.1
1855年 安政江戸地震 M7.0-7.1
1894年 明治東京地震 M7.0
1895年 茨城県南部 M7.2
1921年 茨城県南部 M7.0

これらの地震は、震源域が陸域にも及ぶため、直下型地震のような強い揺れを引き起こすことがあります。また、海底での地殻変動により、津波を発生させる危険性も伴います。

想定震源域と様式

相模トラフ周辺の地震は、以下の3つの領域で発生すると考えられています。

領域A: 相模湾周辺
領域B: 房総半島南部周辺
領域C: 房総半島沖

地震の様式は、プレート間地震、プレート内地震など、様々です。震源の深さは、30kmから80km程度とされています。

巨大地震の再来周期

M8クラスの巨大地震の再来周期については、GPS観測データや変動地形の調査から、200年から800年程度とする複数の仮説があります。しかし、元禄地震以前の記録が少ないため、正確な再来周期は不明です。

過去の地震発生履歴から、領域Aでは約400年間隔で、領域Bでは約2,000年から2,700年間隔で地震が発生していると考えられています。

想定される巨大地震

大正型関東地震: 相模湾から野島崎を震源とする、陸側のプレートとフィリピン海プレート間の低角逆断層型の地震。
元禄型関東地震: 相模湾から房総半島南東沖を震源とする、陸側のプレートとフィリピン海プレート間の低角逆断層型の地震。大正型よりも震源域が広く、連動型の地震であると考えられています。

防災計画

相模トラフ周辺の地域では、国や地方自治体が地震対策を策定し、防災訓練を実施しています。特に、首都圏では、直下型地震への対策が重要視されています。

観測体制

様々な機関が相模トラフの観測を行っています。

海上保安庁水路部: 海底の地質調査を実施。
防災科学技術研究所: 海底ケーブル式地震計による常時観測を実施。
* 海洋研究開発機構: 海底観測施設を設置し、地震計や水圧計などの観測機器を用いて観測を実施。

相模トラフの生物相

相模トラフ周辺海域は、化学合成生物群集が多数確認されており、生物多様性の観点から重要な海域として選定されています。

まとめ

相模トラフは、複雑なプレート運動が引き起こす地震多発地帯であり、巨大地震の発生リスクが高い場所です。そのため、地震のメカニズム解明と、防災対策が非常に重要です。最新の研究成果を参考に、防災意識を高め、災害に備えることが求められます。

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