相給

• ---

相給制度の概説

相給（あいきゅう）は、近世日本において普及した村落における特殊な領地の分配形態です。この制度では、一つの村が異なる複数の領主に割り当てられ、特に江戸時代の関東地方において顕著でした。背景には、国家（幕府）からの指導があったため、多くの場合、旗本がその領主となりました。

相給には、さまざまなタイプの領主が存在し、これには旗本のみならず、地方の大名、寺社、そして幕府所領までが含まれます。また、相給の村においては、領主が二人のときは「二給」、三人の場合は「三給」と称される一般的な呼称が使われています。記録によると、場合によっては13人の領主がいる「十三給」という村も存在しました。特に岡山藩の邑久郡尾張村は、享保年間に26人の領主に分割されていたという驚くべき事例があります。

制度導入の背景

相給制度の採用には、さまざまな要因がありました。主な要因としては、土地の質や年貢の取り決め、さらに知行権をめぐる抑制などが挙げられます。農民たちが団結し、権利を求めるのを防ぐため、一つの村を分割する手法が取られました。さらに、これは時として旗本にとっての知行地の管理が不安定になる事態を招き、彼らの経済的困窮や、幕府の力の低下につながるという一面も指摘されています。

村政の運営

相給制度では、名主などの村役人は各領主によって任命されます。このため、一つの村内において複数の名主が存在することが可能であり、同一人物が複数の名主職を兼任する場合も見られました。しかし、領主間の利害対立が複雑化し、これにより村政は時折混乱をきたす要因となりました。また、相給による支配が各領主により決定されるため、村内の行政組織が機能しづらくなることもありました。

支配の帰属とその影響

相給体制下での支配は、村落が複数の領主により共同で管理されるというものではなく、それぞれの領主によって支配権が細かく区切られました。具体的な領地の分配は、村の地理的条件や田畑の状況を考慮して決定され、一律に区分することは行われませんでした。これにより、村内はモザイク状の領地となったため、それぞれの地域で独立した監視体制が必要となり、新たな組織（郷五人組）が編成されることもありました。

このように、相給制度は近世における村落の運営と支配形態に独自の影響を与え、同時にその複雑さが村内の混乱を招く要因となりました。その結果、相給制度は、幕府や旗本の権力構造が近世日本においてどう変遷していったかを理解する上での重要な要素とされています。

もう一度検索