相良油田

相良油田：日本の太平洋岸唯一の油田の歴史

相良油田は、静岡県牧之原市西部に位置する油田です。かつては日本の太平洋岸で唯一の産油地として知られていましたが、現在は石油採掘は行われていません。しかし、油井や簡単な試験設備は保存されており、その歴史を今に伝えています。

発見と隆盛

相良油田の発見は、1872年（明治5年）に遡ります。元彰義隊士で駿府藩士であった村上正局が、海老江村の谷間で油臭い水が湧き出るのを発見したのが始まりでした。村上は静岡学問所の外国人教師、エドワード・ウォーレン・クラークに鑑定を依頼し、石油であることが判明しました。

1873年（明治6年）には手掘りによる採油が開始され、翌年には日本石油（現：ENEOS）の前身である長野石炭油会社によって、日本初の機械掘りが行われました。最盛期の1884年（明治17年）頃には、約600人が働き、年間721キロリットルの石油が産出されました。

採掘停止とその後

しかし、産油量の減少や海外からの安価な原油の輸入などにより、1955年に採掘は停止されました。相良油田で産出される石油は、世界的にも珍しい軽質油であり、精製せずにそのまま自動車を動かすことができるほどでした。

採油停止後の1980年（昭和55年）11月28日、相良油田は静岡県指定文化財（天然記念物）となり、周辺は「油田の里公園」として整備されました。公園内には油田に関する資料館や体験施設があり、相良油田の歴史や石油について学ぶことができます。

石油分解菌の発見

1993年には、京都大学大学院の今中忠行（現：立命館大学生命科学部）によって、相良油田から石油分解菌「オレオモナス・サガラネンシス HD-1株」が単離されました。この菌は、石油を分解する能力を持っており、環境浄化への応用が期待されています。

現在の状況

現在、相良油田では観光と研究のために、数年に一度の採掘試験が行われています。この模様はイベントとして一般公開され、汲みたての原油を使った原動機付自転車などの始動実演が行われます。

産出油の成分

相良油田で産出される石油は、ガソリン34%、灯油34%、軽油22.5%、重油9.5%という成分構成です。非常に軽質で低粘度であり、ウイスキーやブランデーのような透き通った琥珀色が特徴です。

相良油田は、日本の近代化を支えた重要な産業遺産であるとともに、石油という資源について考える上で貴重な場所です。油田の里公園を訪れ、その歴史と魅力を体感してみてはいかがでしょうか。

参考文献

E.Wクラーク著 飯田宏訳『日本滞在記』講談社、1967年10月20日
『ふるさと百話　第九巻』静岡新聞社、1973年5月1日
『相良町史　通史編　下』相良町、1996年5月30日

外部リンク

相良油田（牧之原市）
体験施設 相良油田坑見学 (牧之原市観光協会サイト) - ウェイバックマシン（2017年5月7日アーカイブ分）
「埋もれた歴史遺産を訪ねて」太平洋岸で唯一あった静岡の相良油田

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