相馬保夫

相馬 保夫

相馬保夫（そうま やすお）氏は、1953年3月生まれの日本の歴史学者です。専門はドイツ近現代史、特にヴァイマル共和国期の社会や文化、労働者文化、労働運動といった分野に深い造詣を持ち、東京外国語大学名誉教授として知られています。

学歴

相馬氏の学究の道は、1975年3月に東京教育大学文学部を卒業したことから始まります。その後、東京大学大学院社会学研究科に進学し、1978年3月には修士課程を修了しました。さらに博士課程へと進み、1985年3月に単位取得の上で退学しています。大学院での学びを通じて、後の専門分野となる歴史研究の基礎を築きました。

職歴

大学院在学中または修了後には、法政大学大原社会問題研究所の兼任研究員を務めるなど、研究活動を開始しました。本格的に大学での教育・研究に携わるようになったのは、1988年4月、鹿児島大学法文学部に助教授として着任してからです。鹿児島大学では研究者としてのキャリアを積み、1997年4月には同学部の教授に昇任しました。

翌1998年4月には、東京外国語大学外国語学部に教授として迎えられました。東京外国語大学では、世界各地の言語や文化、社会を研究する環境の中で、ドイツ近現代史の専門家として教育と研究に邁進しました。2009年4月には、大学院重点化に伴う配置換えにより、同大学の総合国際学研究院 国際社会部門 国際研究系教授となり、引き続き後進の指導と研究活動に取り組みました。

2018年3月をもって東京外国語大学を定年退職。長年にわたる教育および学術研究への顕著な貢献が称えられ、同大学の名誉教授の称号を授与されました。

研究分野と業績

相馬氏の研究は、主にドイツ近現代史における社会史、文化史に焦点を当てています。特に、第一次世界大戦後のドイツに成立したヴァイマル共和国（1918年-1933年）の時代は、社会の変容が著しく、文化的な動向も多様であったことから、重要な研究対象としてきました。この時代の労働者文化や労働運動のあり方、そしてそれに影響を与えた様々な要因、例えばアメリカニズム（近代的な工業生産システムであるフォーディズムなど）が社会や文化に及ぼした影響について、詳細な分析を行っています。

研究成果は、多くの論文や共著書として発表されています。代表的な共著として、小沢弘明、佐伯哲朗、土屋好古の各氏と共に執筆した『労働者文化と労働運動──ヨーロッパの歴史的経験』（木鐸社、1995年12月刊）があります。これは、ヨーロッパ各地の労働者文化と労働運動の歴史を比較検討した共同研究の成果であり、相馬氏がドイツの部分を担当しています。

また、主要な論文としては、ヴァイマル共和国の労働者文化研究の現状を論じた「ヴァイマル共和国の労働者文化──研究の現状」（『大原社会問題研究所雑誌』391号、1991年6月掲載）や、増谷英樹・伊藤定良両氏編の書籍『越境する文化と国民統合』（東京大学出版会、1998年5月刊）に収められた「アメリカニズムとヴァイマル期労働者文化──フォーディズムと社会主義」などがあります。これらの論文は、相馬氏がヴァイマル共和国期の複雑な社会・文化状況を、労働者の視点や国際的な文化交流（アメリカニズムの影響など）といった多角的な視点から読み解こうとする姿勢を示しています。

相馬保夫氏は、長年にわたりドイツ近現代史研究、特に社会史・文化史の分野で重要な貢献をしてきた研究者であり、その業績は関連分野の研究者にとって貴重な示唆を与えています。東京外国語大学名誉教授として、今後もその知見が活かされることが期待されます。

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