相馬昌胤

相馬昌胤：陸奥相馬中村藩を治めた知将

相馬昌胤は、江戸時代前期から中期にかけて活躍した、陸奥相馬中村藩の第5代藩主です。相馬氏21代当主として、藩政を担った彼の生涯は、波乱に満ちたものでした。

家督相続と藩主としての歩み

延宝7年（1679年）、兄の貞胤が後継ぎを残さず亡くなったことにより、昌胤は20歳で家督を相続することとなります。これは、末期養子としての相続でした。同年、将軍徳川家綱に拝謁し、従五位下弾正少弼に叙任されています。


その後、元禄2年（1689年）には、将軍徳川綱吉に召し出され、奥詰、そして側衆の地位に就きます。しかし、同年中に側衆を辞職しています。これは、彼が政治の中枢で活躍することを望まなかったのか、あるいは他の事情があったのか、史料からは断定できません。


元禄14年（1701年）、昌胤は51歳で隠居し、婿養子の叙胤（佐竹義処の次男）に家督を譲りました。隠居後は、領内の幾世橋村に屋敷を構え、静かな余生を送ったとされています。

藩政と人物像

『土芥寇讎記』は、当時の相馬藩の実情について貴重な記録を残しています。同書によれば、藩士の生活は豊かではなく、風俗も必ずしも良いとは言えない状況だったものの、一方で義を重んじる風土が根付いていたと記されています。昌胤の政治については、「家民心易」（家臣や領民の心が安定していた）と評されており、彼の統治が一定の成果を収めていたことが伺えます。


また、昌胤自身については、「学問は少ないように見えるが、実は深い知識を持っている」と評されています。これは、彼が表面的には学問を重視しないように振舞っていたが、内面的には深い教養を備えていたことを示唆しているのかもしれません。

相馬昌胤の生涯と遺産

昌胤は、享保13年（1728年）、68歳で幾世橋村にて生涯を閉じました。幾世橋の興仁寺に葬られた彼は、相馬氏の繁栄に貢献した重要な人物の一人と言えるでしょう。


彼の治世下で、藩政は安定し、領民生活も比較的平穏に保たれたと推測されます。しかし、同時に、『土芥寇讎記』の記述から、藩財政の厳しさや社会問題の存在も窺い知ることができます。


昌胤の生涯は、江戸時代中期の大名として、家督相続、藩政運営、隠居生活と、様々な局面を経験したことを物語っています。彼の統治や人物像に関する記録は断片的ではありますが、後世の研究者にとって貴重な史料となっています。その生涯を通して、彼は相馬藩の安定と発展に貢献した、重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

系譜

昌胤の系譜は、相馬家における複雑な家督相続を反映しています。実父は相馬忠胤、実母は相馬義胤の娘である亀姫です。養父は兄の貞胤です。正室は松平頼元の長女である胤姫で、彼女との間に相馬尊胤（次男）、相馬福胤（五男）、品姫、辰（板倉勝里正室）らをもうけました。また、佐竹義処の次男である叙胤を養子として迎えています。これらの系譜からも、彼の生涯が、家系や政治的駆け引きと深く関わっていたことがわかります。


相馬昌胤の生涯と業績は、江戸時代における地方藩主のあり方、そして相馬氏の歴史を考える上で重要な視点を与えてくれます。今後の研究によって、さらに詳細な情報が明らかになることが期待されます。

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