真野駅

滋賀県大津市真野駅：真野浜水泳場の賑わいと共に消えた駅

かつて滋賀県大津市真野地区にあった江若鉄道真野駅は、1924年（大正13年）4月1日、堅田駅から和邇駅まで江若鉄道の路線が開通した際に開業しました。琵琶湖に面した真野浜水泳場の最寄り駅として、特に夏季には多くの観光客で賑わった活気ある駅でした。

しかし、江若鉄道は1969年（昭和44年）10月31日をもって営業を停止。真野駅も翌11月1日に廃駅となりました。現在では、跡地は湖西線の線路となり、駅の面影は全く残っていません。

駅の構造と規模

真野駅は列車の交換が可能な交換駅で、相対式ホーム2面2線からなる構造でした。旅客輸送に加え、貨物輸送も扱う一般駅として、貨物の積み下ろしのための側線も備えていました。駅舎は簡素なつくりながら、多くの利用客に対応できるだけの規模を有していたと推測されます。当時の写真や資料から、簡素ながらも機能的な駅舎であったことが伺えます。

開業から廃線までの利用状況

開業当初から数年間に渡る年間の乗降客数や貨物取扱量に関する正確なデータは現存する資料からは確認できません。しかしながら、真野浜水泳場の存在と、夏季の利用客の多さを考えると、観光シーズンには相当数の乗降客があったと推測できます。特に、水泳場が盛況だった時期は、真野駅の利用客も増加し、駅周辺は活気に満ち溢れていたことでしょう。

駅周辺の環境と開発

駅周辺は、琵琶湖に面した松林が広がる景観で、人家はまばらでした。しかし、真野浜水泳場近辺は、夏季には海水浴客で賑わいを見せ、多くの観光客を呼び込む地域の中心的な存在でした。水泳場は太湖汽船によって1931年（昭和6年）に開設され、真野駅と水泳場を結ぶ人の流れは、駅の賑わいをもたらす重要な要素となりました。

廃線後は、駅があった場所より北側はびわ湖ローズタウンとして大規模な開発が進められ、住宅が多数建設されました。この開発計画は、1988年（昭和63年）に湖西線堅田駅-和邇駅間に小野駅が開設されたこととも関連していると考えられます。真野駅の存在を示す痕跡は現在では見当たりませんが、地域の開発の歴史を知る上で重要な場所であったことは間違いありません。

参考文献

今尾恵介（監修）『日本鉄道旅行地図帳』 9 関西2、新潮社、2008年
大津市歴史博物館 編『江若鉄道の思い出 ありし日の沿線風景』サンライズ出版、2015年
竹内龍三「私鉄車両めぐり(70) 江若鉄道」『鉄道ピクトリアル』第17巻第1号（通巻192号）、鉄道図書刊行会、1967年1月
寺田裕一『新 消えた轍 ―ローカル私鉄廃線跡探訪―』 8 近畿、ネコ・パブリッシング、2010年
吉田恭一『地形図で辿る廃線跡 古地図とともにいまはなき鉄道を歩く』心交社、1998年
「江若鉄道 その車輛・列車・歴史・駅をめぐる」『レイル No.84』エリエイ/プレス・アイゼンバーン、2012年

これらの文献は、真野駅の歴史や周辺環境、江若鉄道全般に関する貴重な情報を提供しており、本稿の記述の正確性を高めるために参照しました。真野駅は、多くの人の思い出と共に消え去った駅ですが、これらの資料を通じて、その歴史と賑わいの一部を垣間見ることができます。

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