矢倉3七銀

矢倉3七銀：現代将棋の主流戦法

矢倉3七銀は、相矢倉における主要な戦法の一つです。24手目か25手目に▲3七銀と指すことで、先手は容易に主導権を握ることができ、現代将棋の序盤における重要な戦術の一つとして、森下システム、急戦矢倉、早囲いと共に認識されています。

特に渡辺明九段は、先手後手双方でこの戦法を駆使し、高い勝率（約8割）を誇ると言われています。これは、この戦法がいかに強力であるかを示す一つの指標と言えるでしょう。

後手の対応と先手の作戦

後手は、▲3七銀に対して△6四角と対応するのが一般的です。この手を怠ると、▲3五歩△同歩▲同角と進み、先手が理想的な攻撃態勢を築いてしまう可能性があります。

先手が▲3七銀と指した後、様々な作戦が展開されます。代表的なものとして、脇システム、▲3七銀-▲3五歩交換、飛車先不突矢倉型雀刺し、棒銀、▲4六銀-2五歩-3五歩、加藤流、4六銀・3七桂型などが挙げられます。これらの作戦は、後手の対応によって変化し、複雑な局面を生み出します。

加藤流：独特のこだわり

加藤一二三九段によって長年愛用されてきた加藤流は、▲4六銀-▲3七桂型を基調とする戦法です。森下システム全盛期においても独自の指し回しで高い勝率を誇り、▲2六歩を早期に突くのが特徴でした。

▲2六歩-▲1六歩と進めた後、後手が1筋を受けるか否かで対応が変化する柔軟性が、この戦法の大きな特徴です。1筋を受ければ棒銀の形から攻め込み、受けなければ端を突き越してから攻勢に出ます。後手も△7三銀からの速攻、△5三銀による守備固めなど、様々な対応策が存在し、それぞれに定跡が確立されています。

4六銀・3七桂型：理想的な攻撃態勢

飛車先不突の状態で▲4六銀-▲3七桂と進み、▲2五桂からの仕掛けを狙う戦法です。かつて将棋雑誌で命名募集が行われたものの、特別な名前は付けられていません。

当初、後手は▲2五桂からの仕掛けをまともに受けていましたが、徐々に対策が練られていきました。後手は△2四銀で先手の仕掛けを牽制したり、△6三銀-5三角型など、様々な布陣で対応します。しかし、先手も▲5八飛からの突破など、新たな攻め方を編み出しており、両者の攻防は複雑で奥深いものとなっています。

特に、2003年の王座戦最終局、羽生善治九段対渡辺明九段戦では、この戦法が長時間にわたって繰り広げられ、端攻めの有効性が改めて示されました。その後も、△4五歩の復活や、△7三角待機型に対する宮田新手など、新たな戦術が開発され続けています。

近年の展開と今後の展望

近年は、先手が4六銀・3七桂型を選択しない傾向が見られます。後手の対策として急戦矢倉が主流となり、先手もそれに対応する形で序盤の指し方が変化しています。そのため、4六銀・3七桂型そのものは、以前ほど主流ではなくなってきています。

しかし、矢倉3七銀は、現代将棋における重要な戦法であり、今後も様々な研究が続けられ、新たな展開が期待されます。将棋ファンにとって、この戦法の動向は常に注目すべき点と言えるでしょう。

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