矢吹健

矢吹 健（やぶき けん、1945年11月1日 - 2015年1月19日）は、日本の歌手、作曲家。本名：金子 勝孝（かねこ かつたか）。山梨県甲府市出身。ブルース歌謡を得意とし、「あなたのブルース」の大ヒットで知られる。

衝撃のデビュー
甲府商業高等学校卒業後、上京して作曲家の藤本卓也に師事。1968年に師である藤本作曲の「あなたのブルース」でレコードデビューした。ハスキーで情感豊かなその歌声は「ミスティーボイス」と称され、ため息交じりの絶唱スタイルとともに大きな反響を呼び、楽曲は社会現象となるほどの大ヒットを記録した。この成功により、矢吹健は同年の主要な音楽新人賞を総なめにし、第10回日本レコード大賞新人賞（男性部門）、第1回日本有線大賞新人賞、第1回新宿音楽祭金賞を受賞。一躍スターダムに駆け上がった。

ブルース歌謡の確立
「あなたのブルース」に続き、藤本卓也作品である「真っ赤な夜のブルース」「蒸発のブルース」「うしろ姿」などを発表し、ヒットを連発。藤本独特の世界観を持つ楽曲を歌いこなし、人気歌手の地位を確立した。1970年代に入ると「女ですもの」「女の爪あと」といった楽曲を発表したが、大きなヒットは減少。しかし、1983年まで所属したユニオンレコードを中心に、歌唱法を微調整しながらもコンスタントに作品を発表し続けた。ユニオン時代から、自ら作詞・作曲も手がけ、作曲家としては本名や「みやびはじめ」「矢吹健」名義を使用した。その後も複数のレーベルから作品をリリースし、オリエント移籍以降はスキンヘッドにサングラス姿がトレードマークとなった。

音楽性・関連エピソード
その歌声やスタイルは、歌手の森進一と比較されることもあったが、矢吹の歌唱法は藤本卓也の指導による独自のものであった。初期の藤本作品は矢吹の声域より高めのキーが多く、「あなたのブルース」もテレビ等では低いキーで歌唱することが通例だった。1970年頃からは発表曲のキーを下げ、技巧的な表現を重視するスタイルへと変化した。デビュー直後には日活映画「夜の最前線 女狩り」に出演し、劇中で自身の曲を披露。後に他の歌手によってカバーされた楽曲も複数ある。作曲家としても、複数の歌手に楽曲を提供した。最後のレコーディング作品となったのは、息子との父子ユニット名義のアルバムである。

* 相次ぐ悲劇と晩年
私生活では、相次ぐ不幸に見舞われた。1999年、長男が24歳で急逝。さらに2003年には、妻が相模湖で水死体として発見された（自殺の可能性も指摘されている）。家族を立て続けに失ったことは、矢吹の心身に大きな影響を与え、元々あったとされる飲酒の習慣はさらに悪化したという。一時は重度の糖尿病で倒れるも命拾いしたが、その後の生活も健康に配慮する様子はうかがえなかったと伝わる。2005年頃からは、山梨県甲府市内の比較的小規模なアパートで一人暮らしを続けた。2015年1月19日、その自宅アパート内で倒れているところを、宅配弁当の配達員が発見。これにより死去が確認された。69歳だった。彼の逝去は、同年6月2日に公にされた。晩年まで、演歌歌手名鑑には名前が掲載されていた。

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