矢島悦太郎

矢島 悦太郎

（やじま えつたろう）

日本の社会政策学者。
1906年（明治39年）3月6日、新潟県長岡市に生まれる。少年期を長岡で過ごし、旧制新潟県立長岡中学校（現在の新潟県立長岡高等学校）で基礎を築いた後、東京商科大学（現在の1橋大学）に進学。経済学、社会科学の分野を修め、1931年（昭和6年）に学部を卒業した。大学では、著名な経済学者である井藤半彌（いとう はんや）のゼミナールに参加し、深く学問的薫陶を受け、後の研究活動の基盤を形成した。

大学卒業後、社会政策学の研究者、教育者としての道を歩み始める。長年にわたり中央大学において教鞭を執り、多くの学生、後進の育成に尽力した。大学においては、教育・研究活動の中心人物として活躍しただけでなく、学部の運営にも携わった。1963年（昭和38年）から1967年（昭和42年）にかけて、中央大学経済学部長として学部を統括し、その発展に貢献した。また、学内の文化・体育活動にも理解を示し、中央大学バドミントン部部長なども務め、多様な側面から大学運営に関与した。

学術団体においても指導的な役割を果たした。特に、社会政策学会においては、日本の社会政策学研究を牽引する立場にあった。社会政策学会の代表幹事として、学会の運営と学術交流の活性化に大きく貢献。具体的には、1958年（昭和33年）から1960年（昭和35年）までの第5期、そして1970年（昭和45年）から1972年（昭和47年）までの第11期と、二度にわたり代表幹事の重責を担い、学会のさらなる発展と社会政策学研究の深化に尽くした。これらの活動を通じて、国内の研究者間の連携を強化し、研究水準の向上に貢献したことは特筆されるべきである。

その研究成果は、数多くの著作にまとめられている。社会政策学の理論的考察から、社会思想史、具体的な政策課題に至るまで、その研究領域は広範にわたった。代表的な著書としては、初期の研究成果である『社会政策』（広文社、1940年）や『概説社会思想史』（東京文化研究所出版部、1949年）がある。その後も、『社会政策』（中央大学通信教育部事務局、1951年）、『社会政策社会理論研究』（日本評論社、1966年）、社会政策学の標準的なテキストとなった『社会政策概論』（有斐閣、1969年）、そして晩年の理論的考察をまとめた『社会政策理論の根本問題』（中央大学出版部、1981年）など、重要な著作を次々と発表し、日本の社会政策学の発展に不可欠な礎を築いた。

中央大学を定年退職した後も、研究教育活動への情熱は衰えなかった。1986年（昭和61年）まで亜細亜大学の教授として教壇に立ち続け、後進の指導にあたった。長年の学術研究及び教育における功績は高く評価され、1977年（昭和52年）には勲三等瑞宝章を受章している。また、没後の2001年（平成13年）には正五位が追贈され、国家からもその功績が認められた。

2001年（平成13年）2月22日、急性肺炎のため94歳でその生涯を閉じた。矢島悦太郎氏が生涯をかけて取り組んだ社会政策学は、現代社会が抱える多くの課題を理解し、解決策を探る上で重要な学問分野である。氏の研究と教育は、今日の日本の社会政策学界に多大な影響を与え続けている。

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