矢島由紀

矢島 由紀（やじま ゆき）

1962年2月11日生まれ。日本の元女優で、本名は矢島 由紀。千葉県の出身で、東海大学精華女子高等学校を卒業。かつてはジャパンアクションクラブ（現：ジャパンアクションエンタープライズ）に所属し、アクション女優として活動した。

来歴と人物像

幼い頃から運動が得意で、当初はバレーボールやバスケットボールの選手を志していた。しかし、宝塚歌劇団の舞台『ベルサイユのばら』を観劇したことを機に、舞台の世界にも関心を抱くようになる。その後、オーディション雑誌でジャパンアクションクラブ（JAC）の募集広告を目にし、強いインスピレーションを受けてオーディションに挑戦。見事に合格を果たした。

1981年3月、JACに11期生（後に12期生に改称）として入会。当時のファンクラブ会報では、「ちょっぴり少年っぽい、健康的な女の子」と紹介されている。JACの合格者が出演した映画『吼えろ鉄拳』で女優デビューを飾り、入所わずか約3ヶ月という異例の速さで、映画『冒険者カミカゼ -ADVENTURER KAMIKAZZE-』の仁科ミチコ役に抜擢され、その才能を早期に開花させた。NHKの情報番組でJACの女性メンバーが特集された際にはスタジオにも生出演し、先輩からは通常アクションをものにするには数年かかると語られたが、矢島は翌年のファンイベントで女性メンバー唯一のアクション個人演技を披露するなど、JAC側からの並々ならぬ期待がうかがえた。

その後、舞台『ゆかいな海賊大冒険』や真田広之のコンサートステージに出演。映画『パソコンウォーズISAMI』では主人公の好敵手となるショウコ役に起用される。この役は当初、強面の男性キャラクターとして設定されていたが、監督がJACの練習場で矢島を見初め、脚本をすべて書き換えて彼女に出演を依頼したというエピソードがある。本人にとっては演じるのが非常に難しかった役柄だったと後に語っている。

テレビ時代劇『柳生十兵衛あばれ旅』では裏柳生・朱実役で初のレギュラー出演を果たし、主人公の盾となって命を落とす役を好演した。再演となった舞台『ゆかいな海賊大冒険』では、酒場の酔っ払いである海賊団のマスコットボーイ、ボルトを演じた。JACの大先輩であり憧れだった志穂美悦子については、会報のエッセイで「仕事には厳しいけれど、優しいお姉さんのよう」と評し、衣装を貸してもらったという心温まるエピソードも披露。「女性としても人間としても最高の人」と綴っている。

特撮作品には『宇宙刑事シャリバン』のイガ星人ベル・ヘレン役で初出演。アクションシーンに加え、キャラクターの魅力とドラマチックな最期が話題を呼んだ。ワイルドな外見とキュートな声のギャップが人気を集め、森永奈緒美と共に「ポスト志穂美悦子」としてアイドル的な人気を獲得。JACの練習場でも一目置かれる存在だったと伝えられている。

1983年11月中旬からは、スーパー戦隊シリーズ『超電子バイオマン』の撮影に参加。シリーズ初の女性イエロー戦士、小泉ミカ（初代イエローフォー）役に起用された。オーディションではなく直接オファーを受けたこと、5人のメインキャストの中で最初に役が決まったこと、そしてキャラクター設定が矢島に合わせて作られたことなどから、製作陣の期待の大きさがうかがえる。

しかし、1984年1月頃に突然JACを退会し、『超電子バイオマン』も番組途中で降板。これを機に、芸能界から事実上姿を消した。

降板と引退の経緯

『超電子バイオマン』の第7～9話のアフレコを目前にして、矢島は突如番組を降板。プロデューサーの鈴木武幸は、撮影済み映像と脚本を確認した結果、第10話で矢島が演じる小泉ミカ（イエローフォー）を、変身後の姿のみの登場とし、「戦死」という形で物語から退場させる脚本修正を行った。ラストシーンは採石場でスーツ姿のまま弔いが行われるという、視聴者に衝撃を与える展開となった。当時の戦隊シリーズはオールアフレコだったため、鈴木プロデューサーは矢島の声に似た声優を手配し、第7話から第10話にかけては声優の田中真弓がノンクレジットでミカ（イエローフォー）の声を担当した。第11話からは急遽「2代目イエローフォー」が登場し、番組は継続された。

通常、俳優が番組を降板する際は、事前に数話分欠場するなど何らかの兆候が見られることが多いが、矢島のケースは第9話まで確実に出演していたにもかかわらず、翌週には不在・降板という極めて突然の出来事だった。降板後、矢島は消息が不明となっており、公式な形での降板理由やその後の状況は明らかになっていない。鈴木プロデューサーは、矢島の突然の失踪によって現場が混乱したことについて、「一言で良いから謝罪して欲しかった」と述懐している。

人物評と特技

JACの同期や共演者からは、矢島由紀の多面的な人物像が語られている。同期の志村忍は「クールで群れることを好まないが、実は寂しがり屋」、田中澄子は「一見他人と壁を作るタイプだが、話すと親身になって聞いてくれるしっかりした女性」と評した。『超電子バイオマン』で共演した牧野美千子は「お芝居に対して自分自身に厳しい人。一人離れた場所で台本を読みながら役作りをしていて、すごい気迫を感じていた」と語る。坂元亮介は、芝居もアクションもできる「稀有な存在」であった一方で「気が強く距離をおいていた」と証言しており、普段の気性も役作りの一環であり、ポスト志穂美悦子としてのプライドがあったのではないかと推測している。

趣味は登山やツーリング（普通自動二輪免許所持）。特技は剣道（二段）、バスケットボール、スキーと、運動能力の高さがうかがえる。好きな言葉は「最上」、好きな色は黒、茶色、臙脂である。

主な出演作品

テレビドラマ

柳生十兵衛あばれ旅（1982年 - 1983年、ANB） - 朱実 役
宇宙刑事シャリバン 第36話 - 第42話（1983年 - 1984年、ANB） - ベル・ヘレン 役
超電子バイオマン 第1話 - 第9話（1984年、ANB） - 小泉ミカ / 初代イエローフォー 役

映画

吼えろ鉄拳（1981年、東映） - 女子高生 役
冒険者カミカゼ -ADVENTURER KAMIKAZE-（1981年、東映） - 仁科ミチコ 役
パソコンウォーズISAMI（1982年、サルボウ・カンパニー） - ショウコ 役

舞台

ゆかいな海賊大冒険（第2回JACミュージカル 1982年、新宿コマ劇場） - エキストラ
ゆかいな海賊大冒険（第3回JACミュージカル 1983年、梅田コマ劇場） - ボルト 役

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