矢島粂安

矢島 粂安 (やじま くめやす)

矢島粂安は1911年に長野県で生まれ、1944年4月に戦病死した日本のプロ野球選手である。松本商業高校（現在の松商学園高校）在学時、彼は1926年春の甲子園大会で特筆すべき活躍を見せた。特に、延長12回において対戦相手の好投手・宮武三郎からサヨナラホームランを打つという、選抜初の快挙を達成し、その試合では外野手としてチームを準優勝に導いた。彼はこの活躍から「信州のベーブ・ルース」と称された。

松本商卒業後は早稲田大学へ進学し、大学野球でもその才能をいかんなく発揮した。卒業後、矢島は清水建設に入社したが、その後東京倶楽部に誘われ、1931年から1933年まで在籍した。在籍中には都市対抗野球大会で2回の優勝を経験し、その実績が彼の名声を高めることとなった。特に、第5回大会と第7回大会における勝利に大きく貢献した。

1934年、矢島は日米野球の全日本選抜メンバーに選ばれ、11月20日に行われたアメリカの大リーグ選抜との試合では彼は2安打を記録し、チームとしての非凡な実力を示すこととなった。この日米交流戦では全18試合中に14試合に出場し、44打数13安打、打率.295を記録した。矢島はこの成績により、チーム内での存在感を示し、当時の強打者・井野川利春に次ぐ成績を残した。

日米野球での成功を経て、矢島は大日本東京野球倶楽部の創設メンバーとなり、背番号2が与えられた。アメリカ遠征にも参加し、副将としての役割を果たしたが、遠征中には待遇等に関する問題が生じ、選手団内部での摩擦が発生した際、彼はその情報を総監督の市岡忠男へ伝える立場にいた。

さらに、1936年には日本野球連盟が結成される前に彼はチームを退団。その後、第二次世界大戦に従軍し、1944年にはボルネオ島で戦病死を迎えることとなった。享年33歳であった。

現在、矢島粂安の名は東京ドーム内の野球殿堂博物館にある戦没野球人モニュメントに刻まれ、2015年には他の戦没選手4名と共に新たな鎮魂の碑に名が追加された。彼の業績は今でも多くの人々に敬意を持って記憶されている。

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