宮武三郎

宮武三郎：昭和の野球界を彩った天才

宮武三郎（1907年7月23日-1956年12月11日）は、香川県高松市出身のプロ野球選手。投手と打者、両面で卓越した才能を発揮し、日本のプロ野球黎明期を象徴する存在として広く知られています。学生時代からその名は轟き、プロ入り後も数々の偉業を達成。その輝かしい経歴と人となりを見ていきましょう。

輝かしい学生時代：高松商業から慶應大学へ

宮武の野球人生は、地元・高松で始まりました。二番丁小学校時代から頭角を現し、高松尋常小学校チームの一員として全国大会に出場。チームメイトには、後に同じ道を歩む水原茂もいました。その後、香川県立工芸学校から高松商業学校へ転校。抜群の運動神経と体格を買われ、チームの中心選手として活躍し、「四国の麒麟児」と呼ばれました。

甲子園には3度出場。1925年春の選抜では準優勝、夏の選手権では優勝に貢献、19打数7安打、打率.368という好成績を残しました。甲子園での通算成績は11試合45打数15安打、打率.333と、その実力は折り紙付きでした。

慶應義塾大学に進学すると、1927年春の東京六大学野球リーグ開幕戦で鮮烈なデビューを飾ります。先発投手として6安打完封勝利、打者としても3安打を放ち、うち1本は神宮球場初の柵越え本塁打でした。1年生投手による開幕戦勝利は、2007年の斎藤佑樹まで続く偉業でした。

東京六大学リーグでの活躍と早慶戦

慶應大学時代、宮武は投手として61試合に登板、38勝6敗、188奪三振という驚異的な成績を残しました。打者としても72試合に出場、7本塁打、72打点を記録。特に、7本塁打は1957年に長嶋茂雄に破られるまで東京六大学野球の最多記録でした。

在学中は4度のリーグ優勝を経験、東京六大学史上初の10戦全勝優勝も果たしています。特に早慶戦での活躍は有名で、早稲田大学のエース、小川正太郎との投手戦は伝説として語り継がれています。この時代の早慶戦は全国的な人気を誇り、「宮武・小川時代」と呼ばれました。

宮武は、小川の洗練されたピッチングに対し、豪快な投球スタイルで対抗。その圧倒的な存在感から「慶應の超ド級」と呼ばれた一方、小川は「早稲田の至宝」と呼ばれていました。宮武は、大学時代を通じて投打でチームを牽引し、戦前の最高の天才選手と評される所以となりました。

プロ野球での活躍と晩年

慶應大学卒業後は、東京倶楽部などで活躍。1931年には来日した大リーグ選抜チームの対抗戦にも出場しています。1936年、創設間もない阪急軍に入団。背番号1を背負い、初代主将に就任。当時の大学卒の平均月給が60円だった中、宮武は5000円という破格の契約金で話題を呼びました。

阪急では、投手として活躍する傍ら、打者としても活躍。1936年には打率.355を記録。1937年には西宮球場で球団史初のホームランを放ちました。1938年を最後に現役を引退。戦後は駒沢大学や専売公社の監督を務め、1956年、狭心症のため49歳で急逝しました。

1965年には、野球殿堂入りを果たし、その功績は今もなお語り継がれています。娘婿は、同じく野球殿堂入りしている小山正明です。宮武三郎は、昭和初期の野球界を代表する選手として、その名は永遠に記憶されることでしょう。

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