矢樹純

矢樹 純（やぎ じゅん）氏は、1976年12月4日に青森県青森市に生まれ、弘前大学人文学科を卒業した日本の漫画原作者、および小説家です。

人物と活動の始まり

矢樹氏は、漫画家の妹、加藤缶氏（現在のペンネームは加藤山羊）と共に活動を開始しました。当初は「加藤山羊」という共有名義で作品を発表していましたが、後に妹が作画、矢樹氏が原作を担当するという形で分業し、クレジット表記も変更しています。私生活では既婚者であり、2024年時点では大学生の長男・長女と高校生の次女がいます。家族との共通の趣味として、2014年から柔道を始め、2016年に初段、2019年には弐段を取得しています。妹の加藤氏も高校時代に柔道部に所属し、インターハイ出場経験があるなど、兄妹揃って柔道経験者という側面も持ち合わせています。

漫画原作者としての経歴

漫画分野でのキャリアは、2002年に小学館の『ビッグコミックスピリッツ増刊号』に掲載されたギャグ漫画「合コン地獄変」でスタートしました。その後、活動の主軸をストーリー漫画へと移します。2007年からは同誌増刊号でサスペンス漫画『イノセントブローカー』、2009年には小学館のウェブ漫画サイト『モバMAN』でホラー漫画『女囚霊』の連載を開始しました。

特に妹・加藤山羊氏とのコンビでは、2011年より『ビッグコミックオリジナル増刊号』にて婚活ミステリー『あいの結婚相談所』を発表。この作品は、2013年12月の掲載話から、それまでの合同名義を改め「作画：加藤山羊／原作：矢樹純」と明記されるようになった記念碑的な作品でもあります。

他にも、秋田書店『月刊少年チャンピオン』でのホラー漫画『禁忌』（2013年）、無料漫画配信サービスGANMA!でのホラー漫画『忌鬼（いみりおに）』（2017年）など、ホラーやミステリー、サスペンスといったジャンルを中心に精力的に活動しています。妹以外の漫画家とも組んでおり、講談社『週刊ヤングマガジン』やコミックDAYSで連載された闇医者サスペンス『バカレイドッグス』（作画：青木優）はその代表例です。『バカレイドッグス Loser』として異例の復活連載を果たしたことも特筆されます。GANMA!でのホラー『怪談ルゥプ』（作画：加藤綱未）など、幅広い媒体で作品を発表し続けています。

小説家としての活躍と受賞

小説家としての道も開拓しています。2011年には宝島社主催の第10回『このミステリーがすごい!大賞』に応募した長編ミステリー『Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件』が受賞には至らなかったものの「隠し玉」（編集部推薦）として選ばれ、2012年8月に出版され小説家デビューを果たしました。この作品を含む桜木シリーズの続編『がらくた少女と人喰い煙突』なども発表しています。また、ホラー短編集『或る集落の●』やミステリー短編集『かけがえのないあなた』など、Kindleストアでの先行配信や自費出版を経て書籍化に至った作品も複数あります。

特に、2019年4月刊行の祥伝社文庫に収録された短編「夫の骨」は、2020年7月に第73回日本推理作家協会賞（短編部門）を受賞し、小説家としても高い評価を得ました。また、2021年12月刊行の光文社『マザー・マーダー』は、2022年10月に第5回書評家細谷正充賞を受賞するなど、小説作品も各方面で注目されています。

多数のアンソロジーにも短編作品が収録されており、小説家としても現代ミステリー・ホラー界で重要な存在となっています。近年も、ポプラ社『WEB asta*』での『幸せの国殺人事件』、双葉社『小説推理』での『不知火判事の比類なき被告人質問』、講談社『メフィスト』での『撮ってはいけない家』など、長編・連作短編ミステリーの連載・刊行を精力的に行っています。

メディア展開

矢樹氏の作品はメディアミックスもされています。2017年7月から9月にかけては、テレビ朝日「金曜ナイトドラマ」枠で『あいの結婚相談所』が山崎育三郎主演でドラマ化されました。また、ホラー漫画『女囚霊 塀の中の殺戮ゲーム』を原作とした映画『女囚霊』が2023年9月に公開されています。

その他

他作家の作品との類似性について言及されたこともあります。芦花公園氏の小説『ほねがらみ』に、自身の短編「べらの社」との類似点があるとして、出版社と作者に説明を求めました。これに対し、芦花公園氏側は過去に「べらの社」を読んだことを認め、類似を謝罪し、電子書籍版の修正が行われましたが、矢樹氏が求めた事実関係の公表は行われませんでした。

漫画原作と小説という二つの分野で、ミステリー、ホラー、サスペンスを中心に、多岐にわたる作品を発表し続ける矢樹純氏は、今後の活動からも目が離せない作家の一人です。

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