矢神知樹

矢神 葵

日本の元女子プロレスラー。本名、リングネームは矢神 葵（やがみ あおい）、後に矢神知樹（やがみ ともき）へ変更。1981年12月4日生まれ。北海道で生を受け、東京で育ちました。聴覚に障害を持つプロレスラーとして、そのキャリアを通じて多くの人々に影響を与えました。

来歴と戦歴

プロレスラーを志した矢神は、まず聴覚障害を持つ人々によって設立されたプロレス団体、闘聾門JAPANに入門しました。練習生として日々研鑽を積む中で、団体の存在を知ったJWP女子プロレスの選手代表であったコマンド・ボリショイ選手と出会い、熱心な指導を受けることになります。この出会いは、その後のプロレスラー人生において非常に大きな意味を持つこととなりました。

2010年10月31日、JWP道場マッチにてプレデビュー戦を行いました。そして約2週間後の11月13日、小松川さくらホールで開催された大会で、矢神葵として正式なデビューを果たします。デビュー戦では、春山香代子、KAZUKI、Leonとタッグを組み、アゴゴ、コマンド・ボリショイ、米山香織、宮崎有妃組と対戦。自身の得意技であるフロッグスプラッシュを決め、見事勝利を飾りました。この華々しい勝利で、プロレスラーとしての第一歩を踏み出しました。

デビューから間もない2010年12月23日には、プロレスの聖地とも称される後楽園ホールで開催されたJWPの大会に出場。師であるコマンド・ボリショイ選手とタッグを組み、さくらえみ、しもうま和美組と対戦しました。聴覚に障害を持つ女子プロレスラーが後楽園ホールのリングに立つのは、この時が史上初めての出来事であり、歴史的な瞬間となりました。

2011年に入ると、JWPへ定期的に参戦するようになり、本格的に活動の場を広げます。コマンド・ボリショイ選手とのタッグチーム「レインボードラグーン」を結成し、JWPタッグリーグ・ザ・ベスト2011にもエントリーしました。同年4月3日のJWP後楽園大会では、花月選手が保持するJWP認定ジュニア王座およびPOP王座への挑戦が実現しましたが、ベルト獲得には至りませんでした。

2011年5月14日の闘聾門JAPAN主催大会より、リングネームを「矢神知樹（やがみ ともき）」に改名します。同年8月31日には、所属していた闘聾門JAPANを退団し、以降はフリーランスとしてJWPへの定期参戦を継続しました。

2012年になると、活動の軸を海外へと移します。JWPのリングからは一時離れ、ムエタイの修行のため定期的にタイへ渡航。この頃、さくらえみ選手がタイで旗揚げした我闘雲舞（ガトームーブ）の会場にもセコンドとして姿を見せることがありました。

2013年からは、日本国内での活動も再開。フリーランスの立場で、聾者と健聴者のバリアフリープロレスを掲げるHEROに継続的に参戦するようになります。そして、2014年12月10日には、かねてより縁のあったHEROへ正式に入団しました。

HERO所属レスラーとして活動を続ける中で、度重なる負傷に悩まされ、欠場を余儀なくされることが増えていきます。現役続行か、引退か、葛藤する日々を送る中、大きな転機が訪れます。それは、自身のプロレス人生の礎を築いた恩師であるコマンド・ボリショイ選手の引退でした。師の引退を機に、自身も引退することを決意します。

2019年9月28日、新木場1st RINGにて引退セレモニーが盛大に行われました。セレモニーには、恩師であるコマンド・ボリショイ選手や、デビュー戦のパートナーであったKAZUKI選手らが駆けつけ、花束を贈呈。多くの仲間に見送られ、プロレスラーとしてのキャリアに終止符を打ちました。

所属遍歴

闘聾門JAPAN（2010年〜2011年）
フリーランス（2011年〜2014年）
HERO (プロレス)（2014年～2019年）

人物

憧れの選手として、かつて後楽園ホールでも対戦した経験を持つさくらえみ選手の名前を挙げています。

得意技

飛び付き十字固め
各種蹴り技
フロッグスプラッシュ

聴覚の壁を越えてリング上で輝きを放った矢神葵は、その存在自体が多くの人々に勇気と希望を与えました。

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