矢臼別演習場

矢臼別演習場の概要

矢臼別演習場（やうすべつえんしゅうじょう）は、北海道の野付郡別海町および厚岸郡の厚岸町と浜中町にまたがる陸上自衛隊専用の演習場です。この演習場は、総面積約16,800ヘクタールを誇る国内最大の規模を持っており、特に射程18キロの長射程射撃施設が備わっています。この場所では、年間300日以上の演習が行われ、第一空挺団によるパラシュート降下展開演習やアメリカ軍との共同訓練も実施されています。

特徴

矢臼別演習場は、根釧台地の上に位置し、火山灰地の特性を持つため、穴が掘りやすい地質が特徴です。全体的には緩やかな丘陵地帯で構成されており、上富良野演習場や然別演習場とは異なり、ランドマークとなる高い山脈が存在しないため、演習中は単独行動をとる際に迷いやすい点が挙げられます。

また、演習場内にはヒグマが出没することもあり、特に夜間の訓練が年に数回中止されることもあります。この広大な演習場は、自衛隊の演習場としては唯一、演習場単独で方面隊規模の訓練を実施できる能力を有しています。そして、時には方面総監統制による師団対抗演習や全面動員の訓練が行われることもあります。

演習場内には国道272号も通っており、国道から約1キロ東に弾着地があるため、射撃時には警戒員が待機しており、民間人の進入を防止するための注意喚起が行われています。しかし、過去には火器訓練中にアメリカ海兵隊が誤って実弾を演習場から500メートル離れた牧草地に着弾させる事故も発生しています。

演習場の歴史

矢臼別演習場は、歴史的に農業用地の一部を国が買い上げて設立された経緯があり、現在も演習場内には未買収の私有地が存在します。このため、演習の際には住民からの抗議活動が行われることも少なくありません。

行われる演習内容

矢臼別演習場では、さまざまな演習が行われますが、主な訓練内容には以下のようなものがあります：

• - 方面隊演習: 主要演習場を同時使用し、方面隊の指揮による訓練。
• - 師団対抗演習: 2個師団が対抗する大型演習。
• - 戦闘団検閲: 攻撃と防御が同時に行える訓練。
• - 日米共同訓練（FTX）: アメリカ軍との連携訓練。

また、射撃訓練では、米海兵隊の実弾射撃や特科部隊の射撃訓練、対戦車誘導弾の実射訓練などが行われます。

演習場の管理と施設

この演習場の管理業務は、別海駐屯地の業務隊が行っています。演習場内にはアメリカ軍専用の指揮運用施設や宿泊用の隊舎があり、自衛隊は原則としてこの施設を使用することができません。演習場内には宿営地とともに生活に必要なトイレや浴場も設置されていますが、唯一の売店は一般的な価格よりも高めの「山価格」を設定しています。

飛行場の概要

矢臼別演習場内には、2つの飛行場が存在します。別寒辺飛行場と矢臼別飛行場はともに防衛省が管理しており、主にヘリコプターの発着が行われます。これらの飛行場は滑走路が芝生で覆われており、発着の際には特別な注意が必要となります。

このように、矢臼別演習場は、その広大な面積と多様な訓練内容により、陸上自衛隊だけでなく、国際的な軍事訓練拠点としても重要な役割を果たしています。

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