知多鉄道デハ910形電車

知多鉄道デハ910形電車

知多鉄道デハ910形電車は、1931年に知多鉄道が導入した電車で、愛知県の知多半島を対象にした鉄道路線で運用されました。この車両は当時の最新の設計を取り入れたもので、名古屋方面への旅客輸送を行っていました。

導入背景

知多鉄道は1927年に設立され、愛知電気鉄道の資本参加によって運営されました。1931年4月には、常滑線から分岐して成岩までの15.8 kmの路線が開業し、同年3月にデハ910形として8両が製造されました。この形式名は、製造された年である1931年が皇紀2591年に相当することから来ています。

車両の仕様

デハ910形は、長さ16,000 mm、幅2,630 mmの半鋼製車体を備え、両運転台を持つ設計になっています。車両は新たに設計されたもので、居住性に配慮したクロスシートを備えています。また、車両番号は親会社の愛電に倣い、0から始まるものでした。また、かつては知多鉄道の路線と競合する国鉄武豊線への対抗手段として、快適性を重視して設計されました。

車体の特徴

デハ910形は、普通鋼を用い、丈夫な構造で作られています。前後に配置された運転台や、引き戸の貫通扉が細部に工夫を凝らしています。また、客用扉は幅1,000 mmで、乗降の便を考慮した設計がなされています。すべての開閉窓は二段構造になっており、上段が固定されているため、空気が流れるような工夫がされています。

主要機器と駆動方式

主要機器は愛知電気鉄道の仕様を踏襲しており、制御装置にはウェスティングハウス製の非自動進段制御器を使用し、主電動機にも同メーカーのものを採用しています。駆動方式は吊り掛け式で、快適な乗り心地を実現しています。台車は鉄道省の他の車両と同様、釣り合い梁式台車が装着されています。

運用開始からの流れ

本形式は開業と同時に運用を開始し、急行運転や特急運用にも使用されました。1941年には名鉄に改名され、デハからモへと形式名が変わりました。太平洋戦争の影響もあり、知多鉄道は名鉄傘下に取り込まれ、さらなる改造が施されました。その結果、車両のデザインや機能などに変更が発生しました。

戦後の運用と改造

戦後も引き続き知多半島で運用され、車内の仕様も見直されました。1950年代から1960年代にかけては改造が進められ、古い設備を新しいものに交換していきました。特に1970年代中頃には、瀬戸線への転用が決定し、さらなるアップグレードが施されました。

瀬戸線での運用と最終的な淘汰

1978年3月には瀬戸線の架線電圧が昇圧され、役目を終えたデハ910形は同年中に全車除籍となり、消滅しました。

終わりに

知多鉄道デハ910形は、長きにわたり地元交通機関として多くの利用者に親しまれ、時代の変遷に伴うさまざまな変化を経て運用されてきました。バラエティに富んだ歴史を持つこの車両群は、鉄道ファンの間でも語り継がれています。

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