愛知電気鉄道

愛知電気鉄道（愛電）

愛知電気鉄道（愛電）は、1910年に設立され、愛知県名古屋市を拠点に県南東部で鉄軌道事業を展開した鉄道事業者です。1935年に名岐鉄道と合併し消滅しましたが、その路線は現在の名古屋鉄道（名鉄）の基幹路線として重要な役割を果たしています。名鉄社史では、名岐鉄道と並び名鉄の前身における二大主流と評されています。

概要

愛電は、公共交通の便が不十分だった知多半島西岸地域と名古屋市を結ぶため設立されました。1913年に常滑線を開通させた後、1922年からは名古屋市と豊橋市を結ぶ豊橋線の建設に着手し、1927年に全線開通。西尾鉄道を合併し、知多鉄道・碧海電気鉄道を傘下に収めるなど、県南東部を中心に路線網を拡大しました。

昭和初期の経済不況で経営危機に陥るも、回復後は政府主導の地域交通事業者統合の流れに乗り、名岐鉄道との合併に至りました。1935年8月1日に名岐鉄道を存続会社として合併、愛電は解散し、資産は名岐鉄道（現・名鉄）へ継承されました。

歴史

前史

知多半島西岸地域は窯業が盛んでしたが、鉄道がなく、名古屋方面への輸送は馬車や船に頼っていました。そこで、藍川清成ら地元の有力者が中心となり、名古屋[[電灯]]の顧問弁護士であった藍川清成が発起人となり、名古屋から知多半島西岸を結ぶ鉄道敷設計画が立案されました。

当初は「知多電気鉄道」として免許を申請しましたが却下。その後、愛知県知事や名古屋[[電灯]]の要人に協力を要請し、岩田作兵衛を紹介されました。岩田は建設費削減のため計画を単線の電気軌道に変更し、1909年に特許を出願。1910年、社名を「愛知電気鉄道」と改め、岩田が初代社長に就任しました。

常滑線の建設と開通

会社設立後、愛電は熱田 - 常滑間を4工区に分け建設を開始。電力は名古屋[[電灯]]から供給を受けることとしました。

1912年2月には伝馬 - 大野町間が開通。伝馬町からは名古屋電気鉄道市内線に接続し、名古屋市内への連絡運輸を開始しました。同年8月には秋葉前 - 伝馬町間が開通、1913年3月には大野町 - 常滑間が開通し、神宮前 - 常滑間が全線開通しました。同年9月には国鉄熱田駅との貨物連絡線が開通し、貨物輸送も開始されました。

経済不況による経営危機

愛電は常滑線の延伸と同時に、東陽町線、有松線、半田線、内海線の敷設免許を申請し、資本金を増資しました。しかし、経済不況により資金調達が遅れ、さらに役員の疑獄事件が発覚し、株価が急落。経営状況は悪化しました。

藍川らが経営再建に尽力する中、1914年には福澤桃介が社長に就任。半田線の建設を中止し、有松線の建設に注力することにしました。しかし、経営悪化は続き、東陽町線、内海線、半田線の免許は失効しました。

経営再建と有松線の開通

愛電は政府からの補助金交付を受け、未払込株の払込を完了させ、株式の買入消却を実施。経費削減にも努めた結果、第一次世界大戦勃発による景気回復もあり、経営状態は改善しました。

1917年3月には神宮前 - 笠寺間、同年5月には笠寺 - 有松裏間が開通し、神宮前 - 有松裏間が全線開通。神宮前 - 常滑間の路線名称を「常滑線」としました。同年6月、福澤桃介が社長を辞任し、藍川清成が3代目社長に就任しました。

多角経営化と常滑線の改良

好景気により鉄道収入が増加する中、愛電は経営の多角化を図り、自動車事業や土地住宅開発事業を開始。常滑線の複線化や有松線の延伸、築港線の建設などを計画し、資本金を増資しました。

1920年10月には古見 - 大野町間の複線化が完成。順次工事が進捗しました。また、名古屋港東岸の埋立地開発を目的とした築港線も1924年1月に開通しました。

豊橋線の建設と開通

愛電は1922年に東海道電気鉄道を合併し、豊橋への路線延長を計画。名古屋市と豊橋市を直線で結ぶ豊橋線の建設に着手しました。

1923年4月には有松裏 - 新知立（仮）間、同年6月には新知立（仮） - 西岡崎間、同年8月には西岡崎 - 東岡崎間が開通。1926年4月には東岡崎 - 小坂井間が開通し、神宮前 - 豊川間の直通列車が運行されました。

1927年6月には伊奈信号所 - 吉田間が開通し、神宮前 - 吉田間が全線開通。特急列車を運行し、大幅な所要時間短縮を実現しました。

既存路線の改良

愛電は豊橋線の延伸と並行して、常滑線や豊橋線の複線化や軌道強化、架線電圧の昇圧を順次実施しました。1930年には神宮前 - 吉田間の超特急「あさひ」を新設しました。

事業者合併と子会社設立による路線網拡大

愛電は碧海電気鉄道を設立し、西尾鉄道を吸収合併。知多鉄道を設立するなど、路線網を拡大しました。1935年には名古屋地区における二大電鉄会社と並び称されるほどになりました。

名古屋市中心部への路線延伸計画

愛電は名古屋市電との連絡運輸を開始し、自社路線による名古屋市中心部への乗り入れを計画。しかし、資金調達難から実現には至りませんでした。

三河鉄道との合併計画

愛電は三河鉄道との間で貨物列車の相互直通運転を開始し、合併を計画しましたが、合併条件を巡り対立し、合併案は消滅しました。

二度目の経営危機

世界恐慌の影響により、愛電の業績は再び悪化。従業員の給与削減や解雇を実施するなど、経営は危機的状況に陥りましたが、景気回復とともに危機を脱しました。

名岐鉄道との合併・名古屋鉄道成立

国策として地域交通事業者の統合が推進される中、愛電は名岐鉄道との合併に至りました。1935年8月1日、名岐鉄道を存続会社として合併し、愛知電気鉄道は解散。名岐鉄道は名古屋鉄道（名鉄）と改称し、新たなスタートを切りました。

路線

常滑線
豊橋線
築港線
西尾線

車両

愛電は多種多様な車両を保有していました。その多くがアメリカ・ウェスティングハウス社製の電気機器を搭載していました。

鉄道事業以外の事業

電気供給事業
自動車事業
土地販売・住宅開発
観光事業

もう一度検索