知床岳

知床岳：手つかずの自然が残る原生火山

知床半島にそびえ立つ知床岳は、北海道羅臼町と斜里町にまたがる標高1254.2mの成層火山です。その山容は、まさに原生自然の象徴と言えるでしょう。山頂付近は、かつての大噴火によって形成されたと考えられる、大きな爆裂火口によって特徴づけられています。

地質と地形

知床岳は、主に安山岩から構成される円錐形の火山です。山頂北側には、急峻な崖が形成されており、これはかつての火口壁の名残と考えられています。南東側は比較的緩やかな斜面が広がり、高原状の地形を呈しています。山体の西側斜面には、ポトビラベツ川と鮹岩の沢が深く刻まれ、オホーツク川へと流れ込みます。東側斜面には、ウナキベツ川とカモイウンペ川が流れ、根室海峡へと注いでいます。

山体の多くは、更新世（約260万年前～約1万年前）に噴出した安山岩の溶岩流によって形成されており、西斜面には広大な針葉樹林が広がっています。侵食作用によって地形は変化を続けていますが、山頂周辺や知床沼周辺など、火山活動によって形成された地形は比較的よく保存されています。知床岳の火山活動は、およそ60万年前から20万年前の間に起こったと推定されています。なお、山体の北側にはオチッチウシ鉱床、南側にはテッパンベツ鉱山が存在しますが、これらは未開発のまま残されています。

動植物相

知床岳は、オホーツク海からの強風と冷涼な気候の影響を受け、森林限界が500～800mと低くなっています。そのため、標高によって植生が大きく変化します。低地にはダケカンバやミズナラなどの広葉樹林、中腹にはトドマツなどの針葉樹林、そして山頂付近にはハイマツ帯が広がっています。ハンノキも生育しています。

動物相も非常に豊かです。ヒグマをはじめ、オオワシ、シマフクロウなど、希少な大型鳥獣が生息しています。手つかずの自然環境が、多様な動植物の生息を支えていると言えるでしょう。

登山ルートと注意点

知床岳への登山は容易ではありません。整備された登山道はなく、沢の遡行やハイマツ帯のヤブ漕ぎが必要となるため、高い体力と登山経験が求められます。ウトロ側からの登山ルートは、知床大橋からテッパンベツ川に入り、コタキ川を遡行するルートが一般的です。また、相泊側からのルートは、海岸線を北上し観音岩からウナキベツ川を経てポロモイ大地へ出て、稜線を辿るルートとなります。環境省は、相泊側からのルートを推奨しています。

積雪期にはスキー登山が人気で、カモイウンベ川ルートなども利用されますが、冬期の登山は閉鎖される場合があるので、事前に関係機関への確認が必要です。さらに、知床岳から知床岬への縦走ルートも存在しますが、こちらも登山道はなく、高い体力と経験、そして読図能力が不可欠です。

野営は知床沼周辺の指定区域（4人用テント3～4張程度）のみ許可されています。登山に関する最新情報は、羅臼町のルサフィールドハウスで入手することができます。山頂からの眺望は素晴らしく、ポトピラベツ川の大崩壊地など、壮大な景色を楽しむことができます。しかし、危険な箇所も多いので、十分な準備と注意が必要です。

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