知理保以島

知理保以島（ちりほいとう/ちぇるぽいとう）

知理保以島は千島列島中部に位置し、北島と南島の二つの島からなる。両島をまとめて知理保以島と称することが一般的で、その名はアイヌ語に由来しており、エトピリカなどの海鳥が多く飛来することを意味している。「小鳥がたくさんいる場所」という印象を与える島である。

島の英語表記は「Chirpoy」であり、黒い火山岩で形成されているため、「Black Brothers（黒い兄弟）」とも呼ばれる。ロシア名については後述する。

地理

知理保以島は得撫島と新知島の間に位置し、得撫水道の中ほどにある。北側の北得撫水道は水深2,200メートルと、千島列島の海峡の中でもっとも深い場所で、オホーツク海と太平洋をつなぐ重要な海域であり、潮流が激しく難所とされている。一方、南側は水深200メートルほどで平坦なため、得撫島とのアクセスが容易である。

幅約2.2キロメートルの猟虎水道を挟み、北東側が知理保以島（北島）で、南西側が知理保以南島となる。

知理保以島（北島）

南島と区別する際は「北島」と呼ばれる。千島アイヌでは「レプンモシリ」として知られ、「沖にある島」という意味のアイヌ語に由来する。ロシア名は「チルポイ島（Остров Чирпой）」である。北島の周囲は約22キロメートルで、面積は21平方キロメートルほどである。

北島には三つの主な火山がある。

• - 大崩山（おおくずれやま、海抜691メートル、ロシア名:チルポイ山 г.Чирпой）：島の最高峰。
• - 硫黄山（いおうざん、海抜625メートル、ロシア名:チェルノガ山 влк.Черног）：噴火口からは常に白煙が上がる。
• - 日本名不詳（海抜396メートル、ロシア名:スノー山 г.Сноу）：活発な火山活動を行っている。

島内には顕著な河川はなく、飲用水を得るのは難しいが、北東端には続縄文時代の集落跡があり、多くの文化的遺物が発見されている。

知理保以南島

南島は千島アイヌに「ヤンケモシリ」と呼ばれ、「陸の方にある島」という意味を持つ。ロシア名はブラト・チルポエフ島（Остров Брат Чирпоев）で、「チルポイの弟」といった意味である。

ここには島の最高峰である知理保以岳（742メートル）があり、周囲は急峻な崖で囲まれている。活発な火山活動の兆候を示しているものの、記録に残る噴火はない。

南島の北東沖には猟虎島があり、約200メートル離れた場所に位置する。周囲は絶壁で、その自然の美しさが感じられる。

歴史

知理保以島には続縄文時代とオホーツク文化期に集落が存在した痕跡が残っており、近代においても千島アイヌが訪れる場所であった。

1855年に日露通好条約によりロシア領となった後、1875年には樺太・千島交換条約により日本領となる。しかし、1945年にはソ連軍が上陸し、その後、日本が降伏したことでソ連占領地となった。1946年には正式にソ連領有が宣言され、1952年には日本が領有権を放棄した。

現在はロシア連邦が実効支配しているが、日本政府は国際法上未だ帰属未定地であると主張している。

参考文献

• - 北方領土地名考
• - 近代北千島列島誌

知理保以島は、自然に恵まれた火山島であり、独自の文化と歴史を持つ地域である。

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