エトピリカ

エトピリカ（花魁鳥）

エトピリカ（学名：Lunda cirrhata）は、チドリ目ウミスズメ科に分類される海鳥の一種です。その美しい姿から「花魁鳥（オイランチョウ）」とも呼ばれています。名前の由来はアイヌ語で「美しいくちばし」を意味する「etu pirka」から来ており、その名の通り、鮮やかな橙色の大きなくちばしが特徴的です。

分布と生息地

エトピリカは、主に北太平洋の寒冷な海域に生息しています。具体的には、オホーツク海やベーリング海沿岸、千島列島、アラスカ湾からカリフォルニア沿岸部の島嶼などで繁殖します。繁殖期以外は、外洋で生活することが多いです。

アメリカ合衆国
カナダ
日本
ロシア

形態

エトピリカは、全長約39cm、翼長約19-20cm、体重は約678-913gです。全体的に黒い羽毛に覆われており、足は鮮やかな橙色をしています。

夏羽は、顔や額が白くなり、目の後ろから黄白色の飾り羽が伸びるのが特徴です。この飾り羽が、花魁の髪飾りのように見えることから、「花魁鳥」という別名が付けられました。くちばしは大きく、縦に平たく、数本の溝があります。冬羽になると、顔は灰色になり、飾り羽は消失します。

外見はツノメドリに似ていますが、腹部まで黒いことと、夏羽の飾り羽の有無で見分けることができます。

生態

エトピリカは、一年の大半を陸地のない外洋で過ごします。繁殖期である4月から8月にかけてのみ、天敵の侵入を防げる険しい断崖に巣を作ります。飛ぶ際は、短い翼を素早く羽ばたかせて海面近くを直線的に飛びます。

食性は肉食で、イカナゴなどの魚類、イカなどの頭足類、甲殻類などを捕食します。潜水能力にも優れており、足と翼を使って水深10m程度まで潜り、獲物を捕らえます。雛には、イカナゴやニシンの小魚、イカなどを与えます。

繁殖は、海岸や離島の断崖に巣穴を掘って行われます。巣穴は、くちばしと足を使って地面に掘るか、岩の隙間を利用します。巣の中には、草や羽毛を敷き詰めます。5月から6月にかけて、1個の白い卵を産み、雌雄交代で抱卵します。抱卵期間は約42-46日間で、雛は孵化後、約44-47日で巣立ちます。成鳥になるまでには約3年かかります。

人間との関係と保護状況

エトピリカは、広範囲に分布し、生息数も比較的多いと考えられていますが、近年、その数は減少傾向にあります。原因としては、漁業による混獲、原油の流出、人為的に移入されたネズミやキツネによる捕食、気候変動や温暖化による海水温の上昇などが挙げられます。

特に、流し網漁による混獲は深刻で、1980年代には年間123,000羽が混獲されたと推定されています。また、研究やレクリエーションなどによる繁殖地への人間による攪乱も懸念されています。

日本では、1993年に国内希少野生動植物種に指定され、捕獲・採取・譲渡などが原則禁止されています。また、繁殖地である大黒島、ユルリ島、モユルリ島は国の鳥獣保護区に指定されています。浜中町の漁業組合では、協定によりエトピリカの越冬期には一部の漁具の使用を禁止するなど、保護対策が行われています。

しかし、生息数の回復は依然として難しく、環境省のレッドリストでは絶滅危惧IA類（CR）に指定されています。

名称

和名：エトピリカ（花魁鳥）
アイヌ語名：etu pirka（美しいくちばし）
* 英語名：Tufted puffin

エトピリカはその美しい姿と愛らしい動きで多くの人々を魅了する海鳥です。その生息を守るためには、私たち一人ひとりが環境問題に関心を持ち、持続可能な社会の実現に向けて努力することが重要です。

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