知行国

知行国について

知行国（ちぎょうこく）とは、古代や中世の日本において有力な貴族や寺社、武家が、特定の国における知行権を持ち、そこから収益を得る制度を指します。知行国は「沙汰国」や「給国」とも呼ばれており、この制度の下で知行国主として知られる者たちが国の運営に関与しました。

知行権とは

知行権とは、国司の推薦権や官物収得権を意味し、この権利を持つ者はその国から上進される官物を受け取ることができます。知行国主となった有力貴族や寺社は、これらの権利を活用して経済的な利益を享受しました。

歴史的背景

知行国制度の起源は平安時代中期にさかのぼります。特に院宮分国制が重要な役割を果たしました。この制度では、特定の国の国守や受領を院宮家（上皇や女院など）が推薦し、その国から上進される官物を収納する権利が与えられました。これは10世紀初頭から始まり、院宮家は自らの側近や親族を受領に任命することが一般的でした。

11世紀から12世紀にかけて、院宮分国制は有力貴族の間にも拡大し、彼らは自らの縁者を受領に任じることが慣例化しました。これが知行国制の始まりであり、知行国主たちは受領の報酬を自らの収入としました。

制度の違い

院宮分国制と知行国制は異なる制度で、前者は国家公認の制度であり官物は院宮家の収入として扱われました。一方、知行国制は国家が公認したわけではなく、知行国主は公式な手続きに基づいて受領の俸料や得分を得ることができました。このため、同じ国が院宮家の分国であり、同時に他の貴族や寺社の知行国になることもありました。

知行国主の権限と役割

知行国主は名目上、国司推薦権を持っているとされましたが、実際には限られた大名や摂関家等の有力家にしかその権利が行使されないことが多かったのです。任期は通常4年で、重任の場合は最大8年間とされていました。11世紀以降は、公卿の候補者である摂関家の子弟が受領に任命されることが減少し、家司が受領となることが一般的になりました。

知行国の増加

院宮分国や知行国は、院政期に急増しました。これは年数を通じて、院や公卿が持つ給与制度が機能しづらくなり、受領が持つ経済的收益が彼らの家産として見なされ、さらにその利益を多くの者が求めたからです。鎌倉時代に入ると、知行国はより公的に認知され、特定の家系が特定の知行国を代々継承する傾向が強まりました。

室町時代以降の展開

室町時代になると、守護の権限が強化され、知行国制は新たな局面を迎えました。守護は経済的な権利を拡大し、国内の支配を進めることになり、その結果、知行国は消滅していきました。知行国の制度の消失は、時代の変遷とともに各地の権力構造が大きく変化したことを示しています。

このように知行国は、古代・中世日本の政治や経済的な動きの中で非常に重要な役割を果たしました。なぜなら、支配者と被支配者の間の経済的なつながりや政治的な権力の変遷を映し出すからです。

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