院宮分国制

院宮分国制（いんぐうぶんこくせい）

院宮分国制とは、院、女院、中宮、斎宮といった特定の皇族や関係者に、除目の際に特定の令制国の受領を推挙する権利を与え、そこから得られる経済的利益を俸禄の代わりとする制度です。主に院司が受領に任じられ、任国に下って知行国（院分国）を支配しました。この制度は、平安時代から南北朝時代にかけて置かれていました。

制度の由来

院宮分国制の起源については諸説あります。

淡路国に流された淡路廃帝、大炊親王（淳仁天皇）のために、同国の官物・庸調を生活費に充てたこと
平城京に籠った平城上皇のために、大和国の田租・地子稲を生活費に充てたこと
親王任国を制度の始まりとする説

しかし、有力な説としては、延喜8年（908年）に宇多上皇のために信濃国が与えられ、10年後に更に武蔵国が与えられたのが最古の例と考えられています。その後、初めて女院となった東三条院藤原詮子に対しても上皇と同じような待遇が許されました。さらに、久安2年（1146年）には、鳥羽上皇皇后の藤原得子（近衛天皇生母、後の美福門院）に越前国が与えられたのを機に、后妃や斎宮にも同様に認められるようになりました。

経済的利益の源泉

令制国から何を得ていたのかについては、以下の2つの説があります。

1. 任命された受領の俸禄の一部とする説
2. 受領が徴収した租税などの収入の一部とする説

院らの収入が少なすぎる点や、任命された受領にとってのメリットが無くなる点を考慮すると、後者の説が有力であると考えられています。しかし、詳細については不明な点が多く残されています。

制度の変遷

平安時代後期になると、令制国における収入が滞るようになり、複数国の知行を受ける例が増加しました。受領の任期は通常4年でしたが、院らは持ち回りによって毎年のように別個の令制国の受領を任じました。例えば、4ヶ国の知行国があれば、毎年別の国の受領を推挙・任命することになります。このような状況から、「年分受領」とも呼ばれるようになりました。

院宮分国制は、皇族や有力者が経済的基盤を確保するための重要な手段でしたが、同時に地方政治の混乱を招く一因ともなりました。

関連項目

知行国
荘園公領制
受領
院政
院宮王臣家

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