石井代蔵

石井 代蔵

石井 代蔵（いしい だいぞう）は、1936年3月29日に和歌山県で生を受け、2012年12月17日に永眠した日本の小説家である。本名は三郎といった。その作家人生において、特に日本の国技である相撲の世界を題材とした実録小説の執筆に情熱を注いだことで知られる。

早稲田大学文学部にて学び、1959年に同大学を卒業した。卒業後は産経新聞社に入社し、ジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせた。特に雑誌「週刊サンケイ」の記者として活躍する中で培われた取材力や構成力は、後の作家活動、とりわけ事実に基づいた実録小説を執筆する上で大きな財産となったと考えられる。

作家としての第一歩を踏み出したのは1969年である。短編小説「押しの一手」で文壇デビューを果たし、以降、相撲の世界に深く根差した作品を次々と発表していった。彼の描く相撲小説は、単に土俵上の勝負を追うだけでなく、力士たちの知られざる苦悩や喜び、師弟関係、部屋の日常、そして相撲界全体の歴史や伝統、慣習といった多岐にわたる要素を盛り込み、読者を角界の奥深い世界へと引き込んだ。綿密な取材に基づいたリアルな描写と、登場人物たちの人間ドラマを巧みに織り交ぜた物語は、相撲ファンのみならず、多くの人々の心を引きつけた。

代表的な著作としては、『相撲畸人列伝』やその続編、『土俵の修羅』、『大関にかなう』、『巨人の肖像 双葉山と力道山』、『天下盗り狼（ウルフ）千代の富士貢』などが挙げられる。これらの作品は、時代を彩った名力士や個性豊かな角界関係者に焦点を当て、彼らの生涯やエピソードを通じて相撲の魅力を伝えた。また、特定の力士の伝記的な要素が強い作品や、相撲界の歴史的な出来事を扱った作品もあり、彼の著作は相撲史を知る上でも貴重な資料としての側面を持つ。

相撲実録小説という独自のジャンルを確立し、その第一人者として長年活躍した石井代蔵は、2012年12月17日、急性心筋梗塞により76歳でその生涯を閉じた。彼の残した数々の作品は、今なお多くの読者によって読み継がれ、相撲の魅力を伝え続けている。

主な著作（一部）

『相撲畸人列伝』（講談社、1974年）
『土俵の修羅』（時事通信社、1978年／新潮文庫）
『大関にかなう』（九芸出版、1978年／文春文庫）
『巨人の肖像 双葉山と力道山』（講談社、1980年／文庫『巨人の素顔』）
『千代の富士一代』（文春文庫、1991年）
『大相撲親方列伝』（文春文庫、1993年）

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