石内奈々絵

福井県出身の石内奈々絵（いしうち ななえ）は、1984年2月1日に生まれたアマチュア将棋界の傑出した存在です。福井県立羽水高等学校を経て立命館大学国際関係学部で学び、後に元女流アマ名人、そしてアマ女王としてその名を馳せました。

将棋との関わりは早く、1993年には小学生のジュニア選手権で北陸・信越大会の8強に進出しています。高校時代にも全国高等学校将棋選手権大会女子個人戦でベスト8に入るなど、アマチュアのトップレベルで活躍を続けました。

特に輝かしいのは、立命館大学在学中の活躍です。2002年の第23回学生女流名人戦で初優勝を飾ると、その後2005年まで驚異的な4連覇を達成しました。これは、1990年の林まゆみ氏、1994年の棚田真由美氏（いずれも当時学生）に続く史上3人目の快挙として、将棋史にその名を刻みました。

大学在学中の2003年には、京都府代表として出場した第35期女流アマ名人戦で優勝し、「女流アマ名人」の称号を獲得。さらに、同時期にアマ女王であった里見香奈氏に勝利し、アマチュアの二大タイトルである女流アマ名人とアマ女王の2冠を達成するという、歴史的な偉業を成し遂げました。

アマチュア最高峰のタイトル保持者として、プロ棋士も出場する大会にも積極的に挑戦しました。レディースオープントーナメントには複数回出場し、プロ棋士から勝利を挙げることもありましたが、予選突破には至りませんでした。また、2006年に初めて開催されたきしろ杯では、プロ棋士3人を次々と破って決勝に進出するという快進撃を見せましたが、決勝で岩根忍女流二段（当時）に敗れ、惜しくも準優勝となりました。

タイトル防衛戦では波乱もありました。アマ女王戦では、2004年に一度失冠したものの、2005年には挑戦者として再び女王位に返り咲きました。しかし、2006年の防衛戦では、対局当日に交通事故に遭い日程変更を余儀なくされるというアクシデントに見舞われ、挑戦者の香川愛生女流王将（当時アマ）に敗れてタイトルを失いました。

短期間ではありますが、プロ棋士を目指す登竜門である関西奨励会に在籍した経験も持ちます。1998年に6級で入会しましたが、翌年には退会しています。この経験が、彼女の将棋における深みを与えたのかもしれません。

2006年3月に大学を卒業後、社会人として営業職に就きました。その後、2010年に中山商事株式会社に入社。ここでは、自らの将棋と子育ての経験を活かしたユニークな事業を展開します。2012年には、子供向けの紙製知育教材「きょうりゅうしょうぎ」を企画し、商品化を実現しました。この商品の発売以降は、教材を活用した教室やイベント開催など、将棋の普及活動にも力を注ぎましたが、「きょうりゅうしょうぎ」は2020年に生産中止となりました。

メディアへの出演経験も豊富です。高校1年生のときには、2000年1月放送の特別番組「羽生善治の新春大逆転五番勝負」に出演。羽生善治四冠（当時）に挑戦した6人のうち、唯一勝利を収めたことは、アマチュア選手として特筆すべき快挙と言えます。また、2003年10月から2004年3月にかけて放送されたNHK将棋講座「鈴木大介の振り飛車自由自在」では、鈴木大介講師のアシスタントを務め、お茶の間にもその姿を見せました。

2012年時点では、一児の母として、また生まれ故郷である福井県に在住し、中山商事株式会社の社員として多忙な日々を送っていました。石内奈々絵氏は、学生時代に輝かしい実績を残し、アマチュア将棋界の頂点に立ちながら、社会人としても将棋の普及や子育て支援に貢献するなど、多方面でその才能を発揮しました。その将棋人生は、多くの人々に勇気と感動を与えました。

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