林まゆみ

林まゆみ（はやし まゆみ）は、1968年12月31日、大阪府堺市に生まれた元将棋女流棋士です。師匠は有吉道夫九段で、現役時代の女流棋士番号は旧制度で29番でした。大阪府立堺東高等学校を経て近畿大学を卒業しています。

将棋を始めたのは14歳と、プロとなる人物としては比較的遅いスタートでした。父に教えを請うて将棋の世界に入ったとされています。その才能は学生時代に開花し、近畿大学在学中の1987年から1990年にかけて、学生将棋女流名人戦で前人未踏の4年連続優勝という偉業を達成しました。この記録は後に他の選手によって並ばれますが、当時は前代未聞の快挙でした。また、1990年には第22回女流アマ名人戦でも優勝を飾ります。同年、アマチュアながら第4回レディースオープントーナメントに出場し、予選を突破した上に本戦でも3回戦まで勝ち進むという目覚ましい活躍を見せ、プロ入りの足がかりとしました。

これらの実績を携え、1991年に女流育成会に入会。そして翌1992年4月1日付で女流2級として正式にプロ入りを果たしました。その後、1993年4月1日に女流1級へ、そして1996年9月1日には女流初段へと昇段します。この女流初段昇段は、同年度に開催された第1回鹿島杯女流将棋トーナメントでの優勝が条件を満たしたことによるものでした。第1回鹿島杯の決勝三番勝負では、高群佐知子女流棋士を相手に2連勝で優勝を決め、自身初のタイトルを獲得しました。この優勝の功績により、翌1997年4月1日付で女流二段に昇段しています。

他の棋戦においても安定した成績を残しており、女流名人位戦では第19期（1992年度）と第21期（1994年度）でB級に昇格・復帰しています。特に第22期（1995年度）ではB級で6勝3敗という好成績を挙げましたが、惜しくもA級昇格はなりませんでした。また、レディースオープントーナメントでは第11回（1997年度）と第13回（1999年度）でいずれもベスト4に進出。第13回大会では清水市代女流六段（当時）といった強豪も破っています。2003年度には第14期女流王位戦のリーグ戦に参加しましたが、斎田晴子女流六段、千葉涼子女流四段ら強豪が揃うリーグで5戦全敗に終わっています。

棋風は居飛車を主戦場とする居飛車党で、矢倉や相掛かりといった戦形を好んで指しました。手厚く、鈍重でないと評される将棋が多く、時には振り飛車も採用しました。

女流棋士としてのキャリアの中で、女流棋士会との間で一時的なトラブルを経験しています。2005年頃からの女流棋士会活動への非協力的な態度が問題視され、2006年1月には植村真理女流三段（当時）と共に女流棋士会から脱会処分を受けましたが、2007年12月には新体制の下で和解し、女流棋士会への復帰を果たしています。なお、女流棋士会への所属と日本将棋連盟公式戦への出場資格は別であったため、脱会処分期間中も対局活動は継続していました。

最終的に、林まゆみ氏は2010年3月31日付で、「女流棋士総則」に定められた降級点規定により現役を引退することとなりました。引退に伴い、翌日の2010年4月1日付で「引退女流棋士昇段規定」が適用され、女流三段に昇段しています。その後、2010年8月10日付で「一身上の都合」を理由に日本将棋連盟を退会。これにより、女流棋士の肩書きを失い、「元女流棋士」となりました。これは、日本将棋連盟およびLPSA（日本女子プロ将棋協会）を通じて女流棋士制度が始まって以降、退会によって元女流棋士となったケースとしては、同日時点で5例目となる比較的珍しいケースでした。

通算成績は290局指し、130勝160敗（勝率0.4483）でした。棋戦優勝は前述の第1回鹿島杯女流将棋トーナメント優勝の1回です。

もう一度検索