石刀・石剣

石刀・石剣（せきとう・せっけん）

概要

石刀・石剣は、縄文時代後期から晩期にかけて出現した石製の遺物で、縄文中期に登場した石棒から進化したとされています。形が刀や剣に似ていることからこの名前が付けられていますが、弥生時代の磨製石剣や打製石剣とは異なります。

石刀は、片側の縁に刃のような鋭角の稜を持ち、断面が楔形をしています。一方、石剣は両側に鋭角の稜を持ち、断面がレンズ形という特徴があります。これらは、祭祀具の一種とされていますが、考古学者の見解によると、実際の武器としての使用はされていなかったとされています。

八幡一郎は重さから実用的な武器とは言えないとし、呪具との関連を指摘しました。さらに、藤森栄一も、この形状から切れる道具とは思えず、叩く道具としても無理があると述べています。

大陸の青銅器との関連

1926年に喜田貞吉が青森県津軽半島での石刀出土を取り上げ、中国の先秦時代の青銅製刀子を模している可能性を提唱しました。喜田の考えが公表された30年後に、山形県では同様の青銅製刀子が発見され、柏倉亮吉は縄文の石刀が大陸の影響を受けているか議論しました。西脇対名夫は、デザインの一部にオルドス地方やシベリアの青銅製剣が見られると主張し、研究者たちの間で縄文時代の人々が大陸の青銅製品を模倣したという見方が存在しています。

分布に関する研究

後藤信祐による分類研究では、石刀のうち、刃部とは逆の側縁が曲面で結ばれるものは、中部から近畿地方に多く見られ、一方、刃部と逆側縁が二平面にはさまれているものは、東北から北海道にかけて分布しているとされます。また、無頭石棒の一端に文様を施したものは主に近畿・北陸地方に見られ、シンプルなものは秋田県周辺に存在します。

石刀・石剣は縄文後期の中葉を境に広がりを見せ、北陸をはじめとする場所で考古学的に多く見つかっています。南九州や畿内にも存在が確認されていますが、比較的少数です。この石製品の一部は、弥生時代前期まで使われ続けたとも考えられています。

弥生時代における石剣

その他の関連事項

『遠野物語』には、ある遺跡から石刀が発見された記録があり、これも明治時代から確認されています。古墳時代の副葬品の中にも石製の模造品があり、これらの遺物に刀子形や剣形が含まれていますが、石刀・石剣とは異なるとされています。

脚注

• - 喜田, 貞吉「奥羽地方の石器時代文化に於ける古代支那文化の影響に就いて」
• - 柏倉, 亮吉「三崎山出土の青銅刀」
• - 鎌木, 義昌『縄文時代』
• - 藤森, 栄一『石器と土器の話』
• - 研究や見解は他にも多く、考古学の進展と共に新たな情報が得られることに期待が寄せられています。

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