石動権現

石動権現の歴史と信仰

石動権現（いするぎごんげん）は、石動山の豊かな自然と山岳信仰を背景に形成された神仏習合の存在です。この信仰は、古来より伝承された神話や伝説に基づいており、虚空蔵菩薩を本地仏として崇拝されています。神仏分離令が施行されるまでは、石動山にある天平寺からの勧請を受け、全国の石動社で祀られていました。

歴史的背景

『石動山古縁起』によれば、石動山の開山は崇神天皇の6年に遡り、その際、方道仙人がこの地を開いたとされています。さらに、養老元年（717年）には智徳上人が登山し、天平勝宝8歳（756年）に大礼殿という講堂が造営されました。このように、石動山は古くから信仰の対象であり、多くの修験者が訪れる聖地として栄えました。

また古くから伝わる泰澄による開創の伝説もあり、近世初期の学者林羅山の著作『新縁起』でも彼が石動権現を創建したとされています。石動山天平寺の隆盛は中世に至り、その時期には三百六十余の坊と三千人以上の修験者が集まるほどの勢いを持ち情報源となっていました。

明治維新と信仰の変遷

しかし、明治維新に伴う神仏分離令により、石動権現に基づく修験道は大きく変貌を遂げます。明治3年（1870年）には、真言宗の石動山天平寺も廃寺に追い込まれ、伊須流岐比古神社（石川県）への強制的な改組が行われました。この変更により、神道の信仰が重視され、全国の石動社も新たに伊須流岐比古神や石動彦といった神々を祭神として祀る形になりました。

現在の石動権現

今日では、石動権現そのものは神仏分離によって形を変えましたが、その伝統はなおも健在です。多くの石動神社や五社神社が、日本各地で信仰され続けています。これらの神社は、古の信仰を色濃く残しながらも、地域社会と共に新たな形で発展を遂げています。

このように、石動権現は、古代より続く信仰の遺産を持ちながら、時代の変遷に応じた変化を経験してきた重要な存在であることがわかります。信仰の形は変わっても、その精神は人々の心の中に生き続けています。

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