石原憲一郎

石原 憲一郎

1947年生まれ、日本の造園分野における高名な公務員、そして景観園芸家として知られています。

若年期から中央省庁でのキャリア

神戸の地で育った石原憲一郎氏は、兵庫県立長田高等学校を経て、1970年に東京農業大学農学部造園学科を卒業しました。卒業後、建設省（現在の国土交通省）に入省。総理府を含む様々な部署で、公園緑地の整備、都市における緑化推進、そして都市計画全体の政策立案といった、国土の緑と景観に関わる重要な行政実務に従事しました。特に、国際的なイベントである国際花と緑の博覧会（大阪・鶴見緑地で開催）においては、その会場計画の立案という、大規模かつ責任ある役割を担い、その実現に貢献しました。

沖縄での貢献と首里城への思い

中央省庁でのキャリアの一環として、沖縄総合事務局国営沖縄記念公園事務所長を務めた時期があります。この間、沖縄の象徴である首里城の正殿復元工事に深く関わり、その現場責任者として指揮を執りました。歴史的建造物の再生という困難な事業を成功に導いた功績は特筆されます。しかし、2019年に発生した首里城正殿の痛ましい火災に際しては、復元に携わった一人として、深い無念の念を表しています。

兵庫県での地域貢献

1993年からは兵庫県庁に出向し、地方での造園・景観行政に尽力しました。特に、阪神・淡路大震災からの復興と地域の活性化を目指した淡路島でのプロジェクトに深く関与しました。淡路夢舞台の造成においては、単なる開発に留まらない自然再生の手法を取り入れ、環境との調和を図りました。また、日本の景観園芸教育における先駆的な取り組みである兵庫県立淡路景観園芸学校（アルファガーデン）の設立準備段階から関わり、その建設、そして開校後の運営に至るまで、責任者としてプロジェクトを推進しました。開校後には副校長、さらに校長として、多くの景観園芸専門人材の育成に貢献しました。2008年に定年を迎え、公務員としてのキャリアに区切りをつけました。

退官後の活動と功績

公務員を退官した後も、石原氏は造園、景観、そして地域文化の振興に精力的に活動しています。神戸のまちと港を舞台にした芸術文化の祭典である神戸ビエンナーレでは、2013年と2015年の二度にわたり、エグゼクティブディレクターとしてイベントを牽引しました。また、地域の特産を活かした淡路ハーブフェスティバル実行委員長も務め、地域活性化に貢献しています。学術面では、母校である東京農業大学の客員教授として後進の指導にあたったほか、兵庫県参与として県政にも提言を行いました。

長年にわたる造園緑化行政への貢献、特に公園緑地行政や地方における景観まちづくり、人材育成への功績が認められ、2010年には日本の公園緑地分野で最も権威のある賞の一つである第32回日本公園緑地協会北村賞を受賞しました。さらに、2019年秋の叙勲においては、多年にわたる公共分野での功労が称えられ、瑞宝小綬章を受章しています。

主な著作

石原氏は、自身の経験と知見を基に、造園・景観分野に関する多くの著作に関わっています。

『成熟型ランドスケープの創出 緑環境景観マネジメント』（監修、ソフトサイエンス社、2009年）
『フラワーランドスケーピング』（共著、講談社）
『景観園芸宣言』（共著、ビオシティ）
『差異の美学』（共著、出版ワークス）

これらの著作は、日本のランドスケープデザインや景観行政の専門家、研究者にとって重要な文献となっています。

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