石原舜三

石原舜三博士：日本の鉱床学をリードした巨星

石原舜三博士（1934年3月10日 - 2020年3月2日）は、日本の地球科学、とりわけ鉱床学分野において世界的に著名な研究者でした。広島県出身の博士は、1956年に広島大学理学部地学科を卒業後、工業技術院地質調査所（現・地質調査総合センター）に入所し、その後の輝かしい研究人生の幕を開けます。

博士の初期の研究は、ウラン探査プロジェクトへの参加から始まりました。全国各地の花崗岩地帯における放射能調査とウラン鉱物の発見に貢献した博士は、同時に産出するモリブデンやタングステンの鉱床についても研究を進めました。既存の定性的評価にとどまらず、定量的な評価手法を確立し、広域的なモリブデン／タングステン鉱床区、そして磁鉄鉱系／チタン鉄鉱系花崗岩という新たな概念を提示しました。

博士の最も重要な業績の一つは、金属資源の形成に関する法則性の解明です。花崗岩中の磁鉄鉱の有無、つまり花崗岩マグマが固結する際の酸素分圧が、金属資源の濃集に大きく影響することを明らかにしました。さらに、硫黄の挙動の違いによってモリブデン、銅、亜鉛、鉛などの金属元素が磁鉄鉱系に濃集する過程を解明し、この研究成果は欧米の鉱床学教科書にも広く取り入れられました。その原典は現在、イギリス鉱物学会において「得難い古典的論文集」として再出版が進行中です。

博士の研究は、ウランやモリブデンといった従来の金属資源にとどまりません。近年注目されているレアアースやインジウムなどのレアメタルが濃集する鉱床についても、岩石学的な観点から解明に貢献しました。膨大なデータを収集・分析し、その知見は日本の鉱業政策にも大きな影響を与えました。アルゼンチンで発見された新鉱物には、「石原鉱（Ishiharaite）」と博士の名前が付けられ、その功績は世界的に認められています。

学術界への貢献も顕著です。1992年から1994年まで日本鉱山地質学会会長を務め、指導的な役割を果たしました。また、北海道大学教授（1993年～1997年）、工業技術院長（1991年）、工業技術院特別顧問（2001年～）など要職を歴任し、日本の科学技術の発展に尽力しました。

数々の受賞歴も博士の偉大な業績を物語っています。日本鉱山地質学会優秀論文賞、加藤武夫賞、日本地質学会賞、アメリカ合衆国鉱床学会Silver Medal、アメリカ合衆国地質学会名誉会員、ロシア科学アカデミー海外名誉会員、日本鉱物科学会渡邊萬次郎賞、瑞宝重光章、国際鉱床地質学会Gold Medalなど、国内外から高い評価を受けてきました。

石原舜三博士の研究は、日本の鉱物学、ひいては地球科学全体に計り知れない貢献を果たしました。その功績は、未来の研究者たちへの大きな指針となるでしょう。博士の没後も、その業績は多くの研究者によって受け継がれ、発展していくことでしょう。 博士の著作『ポーフィリーカッパー鉱床入門』やS. E. キスラー著『限りある資源』の翻訳など、後進の育成にも尽力しました。編集した英文特集号『Geology of kuroko deposits』、『Granitic magmatism and related mineralizations』も鉱床学研究に多大な貢献をしています。

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