石宝殿古墳

石宝殿古墳（いしのほうでんこふん）

大阪府寝屋川市打上地区に位置する石宝殿古墳は、古墳時代終末期に築造されたと推定される古墳です。1973年（昭和48年）に国の史跡として指定され、その特異な構造から古代史ファンや研究者の注目を集めています。

概要

石宝殿古墳は、生駒山地北端の丘陵斜面に位置し、打上神社の裏山にひっそりと佇んでいます。墳丘は失われていますが、元々は八角形古墳だったという説も存在します。特筆すべきは、南方向に開口する横口式石槨です。これは、花崗岩の巨石をくり抜いて組み合わせたもので、当時の高度な石材加工技術を物語っています。

出土品としては、金銅製の壺（現在は所在不明）や、須恵器片、瓦器椀などが見つかっています。これらの遺物は、古墳の築造時期や被葬者の身分を推測する上で重要な手がかりとなります。

特徴的な埋葬施設：横口式石槨

石宝殿古墳の最大の特徴は、その埋葬施設である横口式石槨です。花崗岩の巨石をくり抜いて作られた石室は、底石と蓋石から構成されています。蓋石には横口と呼ばれる入り口が設けられており、そこから内部にアクセスする構造となっています。

石室の入り口には、閉塞用の扉石があったと考えられていますが、現在は失われています。同様の構造を持つ横口式石槨としては、奈良県の竜田御坊山3号墳石槨や、鬼の俎・鬼の雪隠などが知られています。

石室の前には、花崗岩の巨石2個が左右に据えられ、羨道を形成しています。羨道の天井石は発見されていませんが、側石のみで構成されていたと推測されています。石槨後背には列石が認められ、墓域の区画石や墳丘封土の土留め石とする説があります。この列石の配置から、元々の墳丘が八角形をしていた可能性も指摘されています。

歴史

石宝殿古墳は、江戸時代の文献にも記述が見られ、古くからその存在が知られていました。明治時代には、極楽寺に埋納されていた金銅製壺の売却願が出されるなど、貴重な文化財として扱われていたことが伺えます。

大正時代には、梅原末治によって実測調査が行われ、その詳細な構造が記録されました。その後、1973年（昭和48年）に国の史跡に指定され、保護されています。1988年度には、羨道部の修復に伴う発掘調査が行われ、新たな発見がありました。

文化財としての価値

石宝殿古墳は、古墳時代終末期の有力者の墓として築造されたと考えられています。横口式石槨という特殊な構造や、花崗岩の巨石を使用している点などから、当時の高度な技術や権力を示す貴重な遺構と言えるでしょう。

北河内地域では唯一の横口式石槨を持つ古墳であり、大阪府内でも数少ない例として、その学術的価値は非常に高いと評価されています。古墳の周辺には、打上古墳群や打上神社古墳群といった古墳時代の群集墳が存在しており、これらの古墳との関係も今後の研究課題となっています。

石宝殿古墳は、古代史を紐解く上で重要な手がかりとなる、貴重な文化遺産です。これからも大切に保存され、未来へと語り継がれていくことが期待されます。

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