石峯寺 (京都市)

石峯寺：若冲ゆかりの歴史と五百羅漢

京都市伏見区深草石峰寺山町に位置する石峯寺は、黄檗宗に属する寺院です。百丈山を山号とし、本尊は釈迦如来です。古くは平安時代中期、摂津国多田郷に沙羅連山石峰寺として創建されたと伝えられていますが、幾度かの兵火によって焼失を経験しています。

現在の石峯寺は、正徳3年(1713年)、黄檗宗大本山萬福寺の第6世、千呆性侒和尚によって開創されました。かつては薬師如来を本尊としていましたが、慶長元年(1596年)に土中から発見された薬師如来像を、千呆和尚が深く尊崇し、現在の地に移したことが寺の起源となっています。かつては京都五条大橋東あたりに祀られていたと伝えられています。

石峯寺の大きな特徴の一つに、境内裏山に安置されている五百羅漢石像群があります。安永年間から天明年間(1772～1789年)にかけて、絵師として名高い伊藤若冲が下絵を描き、当時の住職である密山修大と協力して制作されました。この五百羅漢像は「若冲五百羅漢」として広く知られ、多くの参拝者を魅了しています。かつては千体以上あったとされますが、現在も四百数十体が残されており、歴史と芸術の融合を体感できる貴重な文化財となっています。

また、石峯寺は若冲との深い関わりでも有名です。若冲は寛政2年(1791年)から石峯寺門前に草庵を結んで隠棲し、晩年を過ごしました。そして寛政12年(1800年)9月10日、85歳でこの草庵にて生涯を閉じ、石峯寺に葬られました。現在、境内には若冲の墓が保存されており、毎年9月10日には若冲忌が営まれています。

かつて観音堂には若冲による天井画がありましたが、幕末の安政6年(1859年)以前に観音堂が破却され、天井画は寺外に流出しました。現在、これらの天井画の一部は、京都市の信行寺や大津市の義仲寺に所蔵されています。

石峯寺の歴史は決して平坦ではありませんでした。大正4年(1915年)には本堂が焼失し、昭和54年(1979年)には放火によって本堂と本尊の薬師如来が焼失するなど、大きな被害を受けています。しかし、その後、昭和60年(1985年)11月に釈迦如来を本尊とする新たな本堂が再建され、現在に至っています。

近年では、平成19年(2007年)5月には境内の石像が損壊する事件が発生し、平成24年(2012年)には無許可での撮影行為が問題となりました。これらを踏まえ、現在では石像の保存のため、スケッチや写真撮影は全面的に禁止されています。

石峯寺の境内には、本堂の他に、庫裏、方丈、五百羅漢石像群、伊藤若冲の墓、東門（竜宮造）、山門（竜宮造）などがあります。交通アクセスは、京阪電車龍谷大前深草駅下車徒歩約5分、JR奈良線稲荷駅下車徒歩約8分です。伏見稲荷大社や宝塔寺、龍谷大学深草キャンパス、京都聖母女学院短期大学・高・中・小学校にも近く、歴史と文化に触れられる観光スポットとしておすすめです。

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